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第12話-4

 いつ帰ってきてもいいように鍵を開けたまま、ひたすら待ち続けた。暇つぶしに広げたテキストがちっとも頭に入ってこないほど心配して、なぜ飛び出したかもわからないまま時間だけが過ぎた。  そして明け方近くになってようやく帰ってきた隆則が何をしていたのかを告げた瞬間、自分の中にこんな感情が存在するのかと思うくらいの怒りが湧き上がった。  許せなかった。  隆則の身体に自分以外の手が付いたことを。そして遥人に対して怯えていることを。  男同士でどうすればいいのかなんて知識はなかったが、彼がして欲しいのならなんだってするのになぜ自分ではない人間にそれを任せたのか。いくら相手がプロだといっても許せなくて、狂気のまま抱いた。 (この人の全部は自分のだ)  その気持ちのままに犯しては興奮した。自分ので悲鳴ではなく快楽を告げる声になったとき、嬉しくて嬉しくてどうしようもなかった。愉悦で歪む顔を見てどれだけ心が湧き踊ったか。自分をどう思っているのか何度も言わせ、他の男とはしたことがないことを見つけては『俺が初めての男だ』と悦びが増していった。嬉しくて隆則が辛いのも思い至らず、仕事がないのをいいことに毎日のように抱き続けては気を失うように眠る姿が嬉しかった。  隆則が目覚めるまで家事をしたり勉強をしたり。目覚めれば食事を与えまた抱いた。悦ぶ姿を見ると何度果ててもまたしたくなって、自分を押さえられなかった。 (姫はじめの時、可愛かったな……)  初詣に行こうと誘って日付が変わる前に家を出て近所の神社に並び、人ごみに紛れてこっそりと手を握った。たったそれだけで暗がりの中でもわかるほど顔を真っ赤にしながら、僅かばかり握り返してきた。自分の気持ちが一方通行じゃないのが嬉しくて、隆則もちゃんと遥人のことを恋人だと認識してくれているのだと実感した。もともと喋るのが上手くないのか、言葉数が少ない隆則はあまり感情を伝えてくれないが、それでも自分たちは恋人なんだと嬉しくて、最前列になるまでずっと細い手を握り続けた。  お参りが終わると一秒でも早くと彼を引っ張りながら家に帰り、ベッドに辿り着くのももどかしくリビングで抱いた。  男同士でのセックスには準備が必要で中を洗ったりコンドームを付けてやるのが一般的で感染症予防のためでもあると教えて貰ったが、薄いゴム一枚でも二人の間にあるのが嫌だった。それどころか潤滑剤を使えば相手への負担が減るとサイトで調べて知ってても、そういうものすら使いたくなかった。

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