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第13話-2

 いつもはネット通販で済ませているが、どんなに世の中が便利になっても手に取って選ぶ楽しさを排除することはできない。  人でごった返している駅前を何度か肩をぶつけながら進んでいったとき、横断歩道の途中だというのに隆則の足が止まった。 「は……ると?」  今日はゼミの用事があるからと出かけた遥人の姿が人々の隙間から微かに見えた、気がした。  何度か瞬きを繰り返し急いで後を追う。  遥人の大学は渋谷からは遠いはずだ。もしかしたら人違いかもしれないし、ゼミの用事が終わってなにかを買いに来たのかもしれない。もし遥人ならせっかく会ったのだし久しぶりに外で食べるのもいいかもしれない。なんせ彼が家に来てからというもの、一日の休みもなく食事を作り続けてくれているのだ、たまには休養してもらったほうがいい。  少し早足になりながら交差点を抜け駅前の有名な銅像の傍まで来て、隆則は足を止めた。  そこにいたのは遥人で、見間違いではなかったが一人ではなかった。ふわりとした夏の暑さを和らげる色合いと素材のトップスにひっちりとしたデニムを身に着けた愛らしい雰囲気の女の子が隣でなにか話しかけている。会話の内容は雑踏に紛れて隆則のもとまで届かないが、笑いながら返事をする遥人の表情は楽し気でとても気心の知れた相手なのを物語っている。  暑さを避けるためか駅ビルが作る日陰に立ちおしゃれな服が飾られたウィンドウを背にして笑いながら話し合っている。  遥人が何かを告げたのか、女の子は噴き出すように笑いながらあの、自分をいつも優しく時には激しく包み込んでくる腕を親し気に叩いていた。  それはとても健全な恋人同士のようで動けないまま目が離せなくなった。  何度か女の子が持っていた紙袋を持ち変えるのを見て遥人が当たり前のようにそれに手を伸ばす。自分だって重そうな袋を持っているのに彼女の分まで手にして両手が塞がっても重さを感じさせない表情のまま会話を続けている。逞しい遥人の腕が細く柔らかそうな女の子の腕と触れ合うほど近い距離にあっても、二人ともそれが当たり前のように距離を離さないまま楽しそうに喋り続けている。 (あぁ、そうか)  きっとあの子は遥人と親しい間柄なんだ。今日も彼女と会うために言い訳を口にするくらいの、とても親しい……。

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