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第18話-2

「今週は人間らしい生活だ!」  鼓舞してまずはと部屋を片付けていく。口酸っぱく言われてしまったので、ちゃんとプラスチック容器と割りばしは別々の袋に入れ、仕様書はシュレッダーにかける。脱ぎ散らかした服はランドリーバッグに入れてと、以前よりもスムーズに動けるようになった。遥人のやり方を真似てだが、以前よりも狭い部屋のおかげですぐに床は姿を現しワイパーで軽く埃を取り除く。 「これでよし! さて次は……」  電子カレンダーで今日の日付を確認して振り込みをしなければとまたパソコンに向かおうとしてふと立ち止まった。 「もう六月か……」  遥人は無事卒業できたのだろうか。ちゃんと資格を取れたのだろうか。なるべく彼のことを考えないようにして過ごした月日の中で、振り込みの日にはどうしてもあの時間を思い出してしまう。いつもそばにいて自分を気遣ってくれていた存在は今、どうしているだろうか、と。同時に下肢がズンと甘く痺れる。  どうしても遥人のことを思い出すと身体が寂しくなる。  狂ったように抱かれて温かい温もりに包まれながら眠りについた日々が未だに忘れられない。 「今頃、あの子とどうしてるのかな」  ふんわりとした淡い色合いのトップスしか思い出せない相手と今も仲良くしているだろうか。遥人の顔は今でもはっきりと思い出すし、あの逞しい腕も節張った指も、優しく低い声音も全部忘れられずにいる隆則は、離れた日から一度も温もりを感じることなく過ごしていた。性欲が募ればあのデリヘルボーイを呼べばいいと割り切っていたはずなのに、『俺以外に触らせないでくださいね』という言葉の鎖が未だに絡みついて解けない。電話をしようと番号を出しても、通話ボタンを押せなくてはスマートフォンを放り出して彼に抱かれたことを思い出しては自分を慰めるしかなかった。  遥人に開発され新たな性感帯となってしまった胸の粒を弄りながら、蕾の中を暴れまわる淫具で凌ぎ続けていた。 「……はあ」  きっともう誰かに抱かれるなんてないだろう。  一年半も離れているのに、心の中で未だに遥人が傍にいて、散ったはずの恋の花は萎れることなくそこにある。根は心臓を余すことなく張り巡らし、他の根が忍び寄る隙間すらない状態だ。早く枯れろと除草剤を撒き続けているはずなのに、彼に愛された時間が作り出す養分があまりにも強く、未だに心を縛り続けている。

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