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第18話-3
困ったな、と思いながらも遥人との時間を思い出しては人生に訪れた僅かな幸福をじっくりと振り返っては何度も噛み締める。それだけで幸せは蘇り、再び養分として茎を太くしていく。
結局、隆則は遥人を忘れられないまま時間だけが過ぎ去っていった。
今月も念のために送金したほうがいいのだろうか。
もしかしたら資格試験に落ちているかもしれないし、単位を落としてしまっているかもしれない。そう心配するフリをして本当は最後に残った繋がりを断ち切れないでいた。そんなに心配なら一度だけでもマンションに行って様子を見ればいいのだが、その勇気すら隆則にはなかった。もしまだ遥人がいたなら、また恋の花が蕾を膨らましそうで怖くなる。
けれどいい加減どこかで区切りを付けなければとも思う。繋がって嬉しいのは隆則だけで、もしかしたら遥人にとっては迷惑かもしれない。
未だあの部屋にいるかどうか管理会社に確認してもらう方法もあるが、すでに誰も住んでいないとなったら、それはそれで寂しくなってしまう。どの方法も怖くて、ひたすら現状を維持しているしかなかった。
「考えるのはやめよう。今はとにかくゴミをちゃんとしないと」
ベランダに置いてあるゴミを品目別に分けようとしたとき、スマートフォンが鳴った。しかもそのメロディは無茶ばかりを押し付けてくる元後輩のからの連絡を示している。
「げっ」
画面に表示されているのは元後輩の番号で、メールではなく電話をしてくるということは絶対に無理難題に決まっている。
せっかく仕事が終わったばかりだというのに……。だが無視などできない隆則はため息をつきながら通話ボタンを押した。
『あ、五十嵐さんやっと出た!』
「……今度はなんだよ」
名乗りもしない相手にぞんざいな対応をする。
『明日って時間ありますか? ちょっと凄いところからうちにシステムの依頼があったんですけど、プログラマーは五十嵐さんを指名しているんですよ』
「……なんだそれ?」
IT業界ではそこそこ知名度はあるが、一般的に隆則のことを知っている人間は少ない。後輩のところに入ってきたということはITとは別の業種だろうが、フリーのプログラマーをわざわざ指名するなど初めてだ。
『こっちもよく分かってないんですけど、明日ヒアリングに行くんですよ。で、五十嵐さんにも立ち会って欲しいって言われてるんです』
「そこ、本当に大丈夫なのか?」
『外資ですけど名前が通った会社ですから。ここ獲得できたら何人かうちの人間常駐させることできるんで、協力お願いします!』
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