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第21話-6

 思っていることを素直に伝えてくれるようになるまで、急がないで付き合うつもりだ。  それだけの時間はたっぷりあると遥人は思っている。  返事は急がない。 「挨拶だけです。終わったらすぐ帰るので小一時間もいないと思うから、行きましょう。それで帰ったら毎年恒例の……ね。あ、それともしちゃってからの方が緊張しないかも」  猶予を与えるために、ほんの少しだけ話題を反らす。そうしても隆則のことだ、この件に真剣に向き合ってくれるだろう。その間の時間はすべて自分に使ってくれるのだと思うと胸が熱くなる。 「? ……だめっ、絶対ダメ!」  同じことを頭に浮かべているのがまるわかりの真っ赤な顔をすぐにでも食べつくしたくなる。今日は幸いに金曜日だ。隆則の納品も週明けでも間に合うはずだから、このまま食事を済ませたらすぐにでも風呂場に引きずり込もう。相変わらず勝手に隆則のスケジュールを把握している遥人である。 「隆則さん、可愛い顔して煽らないでくださいね。そんなに姫はじめ楽しみなら、予行練習します?」 「しないっ!」 「嘘、大好きなくせに」 「ちがうっ!」 「ご飯食べたらお風呂行きましょうね。その前にいっぱい食べてください。お正月までに少しは太りましょう」  他愛ない話を普通にできる今がとてつもなく幸せなのだと隆則は感じているだろうか。一緒に食事を摂りながら話すだけで胸が温かくなって、可愛い反応を返されるだけで鼓動が高鳴ってしまう。些細な日常が愛おしくて、こんな毎日がこれから先も続くことをひたすら神に祈る。  未だ真っ赤になっている愛おしい人の頬を撫でて笑った。 「早く食べてください。そのあとの時間、俺にください」  昨日よりも今日、今日よりも明日、愛おしさが増すのを感じながら一日一日を手をつないで生きていきたいと願う。 -END-
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