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番外編-酔っ払いと甘い言葉と可愛い人-2

 学生時代から勉強か弟たちの世話かしかしてこなかったせいで未だに時間の潰し方がわからない。ここに隆則がいたなら間違いなく構い倒しているのだが。  趣味=恋人の相手となっている時点で自分が危ない人間であるという自覚が遥人にはなかった。  法令などを読み漁っていると日付が変わった。 「……まったくこんな時間までっ!」  帰ってきたらたっぷりとお仕置きして、今度から飲み会に行きたいなんて思わないようにしないと。額に青筋を浮かべ、パジャマのトレーナーを脱いだ。  隆則がいつ帰ってきても言いように暖めた部屋はいつもより少し温度が高く設定したため、ずっと部屋の中にいる遥人は汗をかいてしまった。ソファに投げ捨てまた法令書を手に取ると玄関で音がするのに気付いた。 (やっと帰ってきたっ!)  すぐさま玄関に走れば、頬を紅潮させふらふらの隆則がそこにいた。 「ただいまぁ」 「お帰りなさい……大丈夫ですか隆則さん?」 「大丈夫、大丈夫!」  初めて見るハイテンションの隆則に遥人は戸惑った。帰ってきたら言ってやろうと頭に書き込んだ言葉が一言も出ない。いつも大人しい彼しか知らない上に、遥人の顔を見てこれでもかと嬉しそうに笑うのだ。屈託のない笑み。 (この人……こんな風に笑うんだ……)  魅了されていると靴も脱がずに隆則が背伸びをして遥人の首に腕を回してきた。 「はるとだー……風呂入ったんだな、石けんの良い匂いがする」  ドラッグストアで特売になっていたボディソープだが、隆則が犬のように首筋に鼻を擦りつけて嗅いでいく。 「いつもと変わらないですよ。……どうしたんですか今日は」  酷くご機嫌で、しかも妙に大胆だ。 「何かあったんですか?」 「別に……昔の仕事仲間と、仕事の話をしてただけ……遥人が俺のことを好きになってくれて良かったなって思っただけ」 「どうしたんですか、急に」 「うん、あの会社辞めた最後の方、俺毀れてて……毎日残業で仕事ばっかして……生きてるのがイヤんなってたの思い出した」  確かに初めて会ったとき、隆則は死にそうな顔をしていた。味噌汁を飲んだだけで泣いて、それにも気付かなくて、遥人がおしぼりを渡して初めて自分が泣いていることを知ったくらい、不器用な人だ。仕事では誰よりも頼りにされているのにそれにも気付かなくて、未だに自己評価は低いまま。 「もしあの頃、遥人に会ってなかったら俺、どっかのビルから絶対に飛び降りてたなって思ったら……今すっごく幸せなんだなって」

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