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番外編-酔っ払いと甘い言葉と可愛い人-3

 アルコールの混じった息を吐き出しながら、その顔はどこまでも蕩けていた。 「俺も遥人のことすげー好きだなって思ったんだ」 「っ……どうしたんですか」  普段は絶対に口にしない甘い言葉がコロコロと飴玉のように落ちてくる。しかも顔に照れも恥じらいもない。  そんなことを言われて遥人の方が顔を赤くしてしまう。だが隆則は気付かず、猫のように甘え続けてくる。鼻先を首筋に擦り付けクンクンと肌着の上から匂いを嗅いでいく。  どうやらアルコールで、普段は叩いても毀れない理性がなくなってしまったようだ。 「隆則、さん? あの……そんなにしたら俺……」 「ん? ……こうするの、だめ? それともこうした方が良い?」  玄関でまだ靴も脱いでいないというのに、隆則はストンとしゃがみ込むとスウェットのズボンを下ろしてきた。 「ちょっ、隆則さんっ!」 「あ……あれだけでこんなになってる……嬉しい」  下着の中で大きくなっている欲望を見て本当に嬉しそうに微笑み、そこに顔を寄せてきた。躊躇うことなく両手で包み、また大きくなったものを嬉しそうに見つめた。  たまらない。  こんなに淫靡な隆則は、理性をなくしているときしか見ることはできない。  いや、どんなにメス達きさせてもここまで開放的になることはないかもしれない。  ゴクリと遥人は溜まった唾を飲み込んだ。 「ここじゃ寒いから……部屋に入ろう、隆則さん」  細い身体を抱き上げようとすれば、まだそこを触っていたいとばかりに嫌々し始めた。 「ダメですって、風邪引いちゃいます」 「やだ……これ、すぐほしい」  頬を擦り付け放そうとはしない。 「暖かい部屋で、ね」  宥めても嫌々するばかりだ。 「だぁめ……ね」  強引に抱え上げリビングへと連れて行く。短い距離なのに、本当に理性がなくなっている隆則は、遥人の首に手を回しては嬉しそうにまた首筋に頬を擦り付けてくる。甘えたな子供のようであり、麝香を放つ猫のようであった。 「今日はどれくらい呑んだんですか?」 「わかんない……ビール三杯くらい、かな」  たったそれだけでこんなになるんだ。ソファに下ろし蕩け紅潮した隆則の頬を撫でた。この家にアルコール類が一切ないし遥人も酒が好きな方ではないが、こんな隆則を見ることができるのなら、週末は酒に合う料理を作ってみようか。どうしても年上なのに可愛い隆則の好きな料理ばかりを用意しがちだが、それも悪くないように思えた。  とろりと溶けた目で見上げてくる隆則に煽られてしまう。

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