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番外編-酔っ払いと甘い言葉と可愛い人-10

 少し斜めになっている方が頭痛が落ち着く。口にしない言葉を察した遥人が凭れてくる隆則の身体に腕を回した。 「これからも飲み会とかあるんですか?」 「わからない……」  ないことを願いたい。もうこんな苦しいのは一回で充分だ。 「そうですか……お酒が飲みたくなったら言ってくださいね。俺が付き合いますから」 「いや、もうこりごりだ」  だって、どうやって家に帰ってきたかすら記憶にない。どんな粗相をしたかもわからない状態を遥人に見せたくはなかった。 「……変なこと、言わなかったか?」 「いえ、なにも。凄く酔ってましたけど俺の可愛い隆則さんのままでしたよ」 「なんだそれは……」  こんな四十を超えた男を可愛いというのは彼くらいなものだ。  そして自分もまた、十五も年下のこの男に溺れきってるのが恥ずかしい。年上なんだからちゃんとしないとと思い、けれどなかなか実現できていない。 「でも俺、隆則さんがお酒飲むの見たことないです……今度俺とも飲みましょう」  自分が知らない隆則がいるのが許せないらしい。お願いしますと請われれば断れないのは、惚れた弱みだ。 「そう……だな。いつになるかわからないけど」  出かけた先で酔い潰れては遥人に迷惑をかけてしまいそうで怖い。昨日みたいに記憶をなくしてしまうほど飲んだなら……きっと呆れられてしまう。  みっともない姿を晒したくなくてなんとか回避を試みようとしても、頭痛が邪魔をして上手く思考できない。 「家の中なら安心して飲めますって」  隆則の不安を先回りして取り除くことに長けた遥人の言葉に、そうかもと思い始めた。 「仕事のない週末なら、大丈夫でしょ?」 「そう、かも……」 「ありがとうございます、嬉しいな」  相手に下心があるとも知らず、喜ぶ遥人の期待に添えなければと頭痛と闘いながら流されていくのだった。  そして、迎えた初めての家飲みで、こっそり遥人が用意した口当たりがよくアルコール度数の高い酒を一杯飲んだだけででろでろに酔った隆則は、可愛く淫らな姿を年下の恋人に晒すのだが、当然記憶になく。  隆則の仕事が終わるのを見計らって、食卓にアルコールが出る様になるのだった。 「美味しいお酒を見つけたので飲んでみましょう」  甘い誘惑に勝てず口に含んでは、アルコールに濡れた口で恋人の欲望を咥え「好きだ」と胸の内を告げるのだった。 -END-

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