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分裂と過剰と悦びと(遥人が二人になりました!?) 6

 いくら老後の資金を潤沢にするためとはいえ、遥人を放っておくのは達けないと自分でもわかっている。だが器用ではない隆則は一度夢中になってしまえば他のことが意識から抜けていき、周囲を忘れてしまう。どんなに遥人のことが好きで好きでどうしようもなくても、プログラミングに熱中してしまえば、彼の声すら届かなくなる。  だからいつだって仕事明けはこうして苦言を呈されて謝罪を繰り返している。  けれど今日の遥人は反省の色を示さない謝罪を許してはくれなかった。 「ごめんっていいながら改善してくれないじゃないですか。隆則さんが何を考えているかわかってますよ。でもね、俺だって働いているし、そんなに薄給じゃないつもりです」  公認会計士の資格を大学在学中に取得し、今は外資系の監査法人に勤めている遥人の手取りは、同年齢の平均よりもずっと高いのは知っている。けれど実家に仕送りをしているし、いつも身綺麗にしなければならない分、費用だって嵩むだろう。そんな遥人に寄りかかるのは十五も年上の隆則のプライドの問題だ。  いつだって頼れる相手でいたい。  家事を全部して貰っているのだから、これくらいは。  だから余計に、無理な働き方は止めてくれと言われて素直に頷けない。 「わかっている」  僅かに唇を尖らせて視線を落とした。 「本当にわかっているんですか? 本当に倒れてしまいますよ、こんな働き方を繰り返したら。……そうだ、もう無茶な働き方ができないようにすればいいんだ」  険しくなる表情が、名案を思いついたと輝いた。 「ど……どうやって」  不穏な空気を感じて隆則は逞しい膝の上から逃れようと腰を動かしたその瞬間、後ろから肩を押さえつけられた。 「ひっ……え?」  二人だけの部屋のはずなのに第三の存在に隆則は慌てて後ろを振り向こうとしたが、すぐに遥人に頬を大きな手で包まれ阻まれた。  うなじをキスされる。 「は、ると?」 「安心して、怖がらないで。隆則さんがもう無茶な仕事をしないように二人でたっぷりと可愛がるだけですから」 「だ……誰?」  いつも隆則に自分以外に目移りするなと訴え、視界を塞ぐために口づけてきた。かつて身体だけの関係にあった矢野にすら嫉妬する遥人がこの部屋に他の男を呼んだのだろうか。そんなはずはない……と考えている間に方に置かれた大きな掌が背中を優しいタッチで撫で下ろしていきゾクリと身体が震えた。 「ぁ……んんっ! は、遥人っ」 「いつもみたいに、俺をトロトロにするキス、してください」  逃げようと唇を離すのに、また両手に顔を固定され濃厚なキスを与えられる。遥人をトロトロにするなんてできるはずがない。いつだって自分がドロドロにされて前後不覚になり、卑猥なことをすべて受け入れてしまうのだ。

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