174 / 181
分裂と過剰と悦びと(遥人が二人になりました!?) 10
当然今日が初めてじゃない。この部屋に姿見を買ってからは頻繁にされている体位だ。けれど、いつもは鏡の向こう、少し離れた場所に遥人の顔があるから見られてもそんなに恥ずかしくなかった。今は違う。すぐ目の前に、キスで唇を濡らし嬉しそうに見上げる彼の顔がある。
「やだっ……やめて!」
「だーめ。俺ももう隆則さんの中に挿りたいんで」
初めてじゃないから、後ろの遥人はいつものように隆則の足を片方持ち上げて少し腰を浮かせると、慣れた仕草でずるりと欲望を挿れてきた。
「ああっ……やめ、て……」
ローションで充分に濡れた蕾は嬉しそうに挿ってきた欲望を食み、ギュウギュウに締め付けた。同時に内壁も待ってたというように絡まっては蠢くのが自分でも分かる。
持ち主の心に反して。
「隆則さんは本当、口から出てくる言葉と中が正反対ですよね」
「こっちにまで見えますよ。隆則さんの可愛い下の口が嬉しそうにモグモグしてるの。そんなに締め付けるくらい気持ちいいですか?」
違う。いや、違わない。
遥人に抱かれることに慣れた身体は、彼から与えられる愉悦に歓喜し、もっと苛んで欲しいと煽ってしまう。身長差のせいで爪先立ちになっているのに、早く動いてくれと腰を揺らすくらい。
「本当に隆則さんはいやらしい。これで胸を弄られたら堪らないですよね」
「ひぃっ……ああっあっ」
有言実行、ベッドに腰掛けたまま胸の尖りを抓んだ手を先程よりも乱暴に動かし始めた。同時に身体を上下に揺らされ中を可愛がられ始めた。
「だめぇっこれだめぇぇ」
「さっきからダメダメばっかりですね隆則さん。でも本当は気持ちいいんでしょう? 達ったばっかなのにもう勃ってますよ」
自分の白濁で汚れた分身はまた力を取り戻し、リズムに合わせて揺れている。
嫌なのに、感じる場所ばかりを刺激されて、愉悦に弱い隆則は次第に嬌声を零すだけになってしまう。欲望を締め付けてはもっととねだるように甘い声を零し、胸を弄られてもっと強くとその手を握りしめてしまう。
仕事明けの疲弊した脳みそはどんな痛みも愉悦に変換して、隆則を昂ぶらせた。
「あっあっ……ぃい!」
「あーもう、そんな気持ちよさそうな顔をしたらもっと悦ばせたくなるじゃないですか……本当、隆則さんは俺を煽るのが天才的に巧すぎる」
独り言は隆則の耳に届いたが、快楽に飽和した脳は処理しきれず置き去りにする。胸を弄っていた指を片方外して、誘うように揺れる分身に触れた。
「ひっ!」
それだけで隆則は嬉しいとばかりに腰を差し出す。中の欲望がずるりと抜けそうになり、慌ててギュッと下腹部に力を入れる。
ともだちにシェアしよう!