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分裂と過剰と悦びと(遥人が二人になりました!?) 17

 顔を隠そうと服を引き寄せれば、独特の臭さが鼻孔につき、慌てて離す。 「何か隠してますね。それ、ください……ってこの匂い……」 「なんでもないんだ、気にしないでくれ! お、俺風呂入ってくる!」 「逃がしませんよ」  長い腕があっという間に腰に伸び、すぐに胸へと抱きかかえられた。洗濯しようとした服と一緒に。 「もしかして、一人でしたんですか? 俺がいるのに」  不機嫌を隠さない声。他の人間が訊いたら縮み上がりそうなほど低いが、隆則はその中から僅かに顔を覗く感情を掌に載せた。 「……拗ねるなよ」  お前の夢を見たから……お前とした夢を見たからこんなことになったんだ。それについて怒られるなんて割が合わない。自然と唇を尖らせてしまう。 「拗ねてません、悲しいんです。隆則さんが溜まってるなら、俺がいくらでも絞り取るのに」  嘘吐け。達かせないくせに……とはさすがに口にできない。それが嫌ではない。ドライオーガニズムまで押し上げられるのは、隆則をひどく愛したがるときだから。  さすがに七年も付き合っていれば分かる。ただ、素直に口にできないだけ。 「不可抗力だったんだ。仕事で疲れてたせいだ、絶対そうだ」  二人の遥人に気を失うまで欲しがられたい願望がある、とは思いたくない。 本当に、絶対に。 (そりゃあ遥人とするのは好きだけど……さすがに一人で充分だ)  一人だって身体が持たないくらいされるのに二人だったら、本当に仕事なんてできずずっとベッドに伏せることになる。さすがにそれは嫌だ。  やっぱり自分が彼のために何かをしていると思いたいから。 「仕事で疲れて……夢精しちゃったんですか。ねぇどんな夢を見たか、俺に教えてください。その通りに抱いてあげます」  艶めかしい低音で囁かれ、綺麗に拭いた分身が震えた。徐々に血が集まっていく。  ずるい。顔だけじゃなくて声も魅力的なんて。 「教えて、隆則さん」  大きな掌が裸の下肢を撫でる。 「誰に、どうやって抱かれたんですか? ねぇ、教えてください」  険しかった口調が次第に二人の……ベッドの時だけの甘えた物へと変わっていく。 「ちょっやめ……あっ」  弱い場所を撫でくたりとした隆則を容易に抱き上げた遥人は、キングベッドが置かれてある自分の寝室に痩身を運び込むと、夢の内容をすべて聞き出すまで甘い責め苦で苛み、すべてを聞き出した暁には数日かけてそれをできる限り実践するのだった。 -END-

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