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分裂と過剰と悦びと(遥人が二人になりました!?) 16
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「……うそだろ」
隆則は座り心地の良いゲーミングチェアに腰掛けたまま動けなかった。
仕事に集中したときによくあることで、椅子に座ったまま寝てしまったらしい。いや、ただ寝ただけだったら良かった。
(なんであんな夢見ちゃったんだろう……)
ちらりと自分の股間を見ては、すぐに視線を逸らしクローゼットへと移す。
「下着……遥人の部屋だよな……」
仕事部屋のクローゼットにはシーズンオフの服が収納されているだけで、すぐに使う服は、ない。
「どうしよう……」
ちらりと見れば燦々と太陽が輝いている。
納品した安心感で寝落ちしたようで、モニターにはメーラーが表示され、クライアントの担当者からは早い納品に感謝するメールがいつのまにか届いていた。
時間を見れば朝というには遅い時間だ。
「遥人……仕事だよな」
いそいそとトレーナーのズボンを下着と一緒に脱いだ。ねっとりとした白濁が糸を引くのを見て、眉をしかめた。
「夢精とか何年ぶりだよ……」
少なくとも遥人と一緒に住むようになってからは初めてだ。すぐさまティッシュで拭い、そーっと部屋を出た。
遥人に見つかる前に綺麗に洗って洗濯機に放り込まないと。
家事を一手に担っている遥人には、どうしても知られたくない。
(ついでに風呂入ろうかな。そうだ、そうしよう。寝たからすっきりしてるし、今日の夕食は俺が作って遥人の帰りを待とう!)
何度もキッチンに立ってはフライパンを焦がして廃棄処分にしているのに、遥人の役に立ちたいと過去の自分がしたことをすぐに忘れてしまう。
下半身剥き出しのままバスルームに向かった隆則だが……。
「何やってるんですか、隆則さん」
突然の声に身体を強張らせた。
「はっ……な、なっ」
遥人、なんでいるんだ。と言いたいのにあまりの驚きに声が詰まる。恐る恐る後ろを向けば、普段着姿だというのにモデルのように様になっている愛しい人がキョトンとした顔をして立っていた。
その手には洗濯物かご……ベランダに洗濯物を干した後というのが一目で分かる。
スッと綺麗な目が細められた。カゴを床に放り投げ、近づいてくる。
「ど……どうして……?」
「今日は土曜日ですよ。相変わらず曜日感覚ないですね。で、その手のものはなんですか? なんで下半身が素っ裸なんですか?」
……訊かないでくれ。いとやんごとなき事情があるんだ。
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