129 / 170

【番外編】納涼・雀荘に巣食う怪異〜呪いのリャンピン牌〜⑥*

 事務所の床に手をついて、肩で息をする。尻のあわいに冷たくて、ねっとりと濡れた何かが落ちてきた。 「ひぅ……っ! なに、なんっ」  休む間もなく、肛門を中心に塗り拡げられる。ぬるぬるとした液体は、達したばかりの萎えたペニスをひんやりと伝ってゆく。 「カゲぇっ!? これ、なに」 「……ライターオイルだ」 「は!? はっ!?」 「冗談だ。普通に、携帯用に持ってるローションだな」 「わっ、笑えん冗談やめろ! ローションを持ち歩くな!」 「ただのヤクザギャグだろ? そうカッカするな」  ツッコミが追いつかん、こいつほんっま……。ムカつきすぎて涙が出たが、それでもさっきの心細い状況よりは、ほんの少しだけマシな気がした。 「あ、あ……もうあかんてぇ……っ」  景虎の指が、尻の中に入り込んでくる。他人の店でこういうことをやるのは良くない、庄助は一生懸命説得したが、反社会的勢力に人の道や常識を説くのは、そもそもが間違っているのかもしれない。  指を二本入れられて中で開かれると、粘ついた音とともに、中の粘膜が外気に晒される。 「いい眺めだな、腹の中のピンク色がよく見える」 「……や……っ」  景虎の喋る吐息が、太腿に当たる。ありえないほど近くで見られている。あまりに恥ずかしくて、言葉をなくした。  開かれて閉じられない穴の中、二本の指の間を縫うように、おそらく反対側の手の指がもう一本侵入してくる。 「ぅっ、あ……イヤや……! カゲの変態、卑怯者……っくぅ」 「こんなところで尻だけ突き出してるほうが悪いだろ」 「せやから、これは事故で……っふ、あ!」  腹側を景虎の指が、探るように圧迫する。浅めの場所にある前立腺を、三本目の指が的確にとらえた。 「いつもより膨らんでる」 「そ……っ、あっ! んやっ、押すな、あきゅっ!」  ヤバい。庄助は思った。気持ちよくてヤバいのはもちろんのこと、さっきから気づかないようにしていた尿意が、腹側を圧迫されることによって明確になってきた。 「カゲッ、か……わかっ、わかったから……もっお……あぁうっ!」  ズキンと膀胱を刺すように、快感と痛みがのぼってくる。いやだと頭を振ったけれど、誰も見ていない。真っ暗な部屋の中で唯一光るスマホのライトが、涙で滲んだ。  捏ねられるたびに、胎内の肉がきゅうきゅうと収縮するのを見られている。きっといつもより遠慮なく。 「わかるか庄助? 中の肉が絡んで抜く時に指と一緒にちょっと出てくるんだ。めちゃくちゃエロい……」 「実況すなクソが……っ! なあ、ガチでトイレ行きたいから、はやく、もう助けてっ……!」 「なんだ、ウンコしたいのか?」 「ひ、人のケツほじりながら怖いこと言うな! ちがう! おしっ……しょんべんや!」 「……仕方ないな、わかった」  いきなり指を抜かれて、庄助の下半身は跳ね上がった。ローションが腿を流れ落ちてゆくのが不快だったが、さすがに景虎もわかってくれたようだ。これで助かる。  最悪な一日になってしまったけど、それももう終わる。家に帰ってあったかいご飯を、もう準備するのめんどいからウーバー頼もう。  一人で納得して頷く庄助の腰に、硬いものが押し当てられた。 「……カゲ、お前」  唇が震えて、こめかみから汗が一筋流れた。景虎のことは変なやつだとは思うが、本気で拒否すればわかってくれると思っていた。それなのに。いや多分、顔が見えていないから、本気度が伝わっていないのかもしれない。 「もっとじっくり、お前のケツの穴の中を見たかったが……庄助がそういうなら仕方ない。一発で勘弁してやるよ」  ぬめった尻を割り広げて、照準を合わせるように、景虎はそれを押し付けた。

ともだちにシェアしよう!