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第二幕 12.プティ・シャノワールに愛の鞭を!①

 ろくに言い訳すらさせてもらえなかった。  手首は身体の後ろでひとまとめにレザー素材の手錠で拘束され、両脚は開いた状態で椅子の肘掛けに片方ずつ、縄でくくりつけられた。  嫌だと叫んだが、景虎があまりに冷たい目で睨むので、庄助はわりとすぐに観念した。  ふざけた猫耳と下着のまま、屈辱的なポーズをとらされて、これから起きることを想像しては、庄助はただ身震いをしていた。    向田たちは、後から来た国枝の手下の組員数人に連れられ、ホテルの部屋を出ていった。ヒカリ以外の男たち2人は血まみれでボロボロだった。  手下たちは慣れているのか、向田の血を吸って変色したバスタオルを手早くビニール袋に詰め、国枝に何事か耳打ちするとさっさと部屋を出て行った。  国枝の手による私刑を、初めて間近で見た庄助は、着替えることも忘れて、呆然とベッドの脇に立ち尽くしていた。 「じゃ、俺ら先に帰るから。片付けよろしくね」  顔面に飛んだ赤いものを洗顔シートで拭き取ると、国枝は庄助と景虎に言った。 このままでは二人で取り残される、と慌てた庄助は必死で、帰ろうとする国枝に縋り付いた。 「クッ国枝さんっ! 俺も、俺も帰ります! 一緒に帰りたいですっ!」 「そうしてあげたいけど、俺このあと用があんだよね。向田さんと本格的に、しっぽりシケこもうと思ってさ」  今までのアレは、本格的ではなかったのかと庄助は戦慄した。向田の金歯を引っこ抜くだけでは飽きたらず、ヒカリの使っていたヘアアイロンを……と、思い出すだけで気分が悪い。庄助は、こみ上げる吐き気を抑えながら言った。 「ひ……ヒカリちゃんは、どうなるんですか……?」 「向田さん次第だよ。それより、自分の心配したほうがいいんじゃない?」  言われてふと気づけば、裸の両肩を景虎の指が力強く掴んでいる。 「ホテルのオーナーには話を通してるから、ごゆっくり」  散々活躍した工具の箱を片手に、国枝は笑って部屋を出ていった。  自分の肌にめり込む指先を見て庄助は、ぴい……と、力無い悲鳴をあげたのだった。

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