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【番外編】庄助の有意義な休日④*
……俺、完全に女の思考になってエロ動画見てる。前はこんなんじゃなかったのに。
先っぽが濡れてきて、精液がせり上がってくる。でもちんこだけじゃ足りない。腹の奥が疼いて、もっと欲しくなる。誰かにこじ開けてほしい、痛いくらいいっぱいに。
「ん、んんっ……」
もどかしくてスマホをベッドに置いた。いやらしい音声だけがイヤホンから聞こえてくる。
ちんこだけじゃなくて、ナカの気持ちいいとこを押したい。ベッドサイドのキャビネットをちらりと見る。あの中に、ゴムやローションが入っているのだ。
ひとりでケツなんか弄ったら、賢者タイムになってからアホみたいに虚しくなるのは明白や。でも……ちょっとくらいなら。カゲのクソデカいのがいつもブッ刺さってんねんから、指の一本や二本誤差の範囲っつーか。
わかってる、これは他でもない自分への言い訳だった。俺はパンツを腿まで下ろした情けない格好のまま、そっと立ち上がった。
そういえば、ティッシュどこ置いたっけ。
キャビネットの反対側、玄関の方をふと振り向く。デカい人影が目に映った瞬間、俺はこれ以上ないくらい驚いて、天井に頭が刺さる勢いで飛び上がった。
「おわああーーーーっ!?!?」
思わず股間を隠した。キッチンに立ったカゲが涼しい顔でこちらを見ながら、ペットボトルの水を飲んでいる。
「カッ、なっ……!? なんでやねんっなんなん……なんで!?」
なんでや! 今日は親父さんと買い物言うてたやろ。なんでこんな早いねん、おかしいやろ!
キャンキャンとわざとらしく泣き喚くワイヤレスイヤホンを、半ば耳から引きちぎるように外すと、やっと外界の音が聞こえてきた。
「ただいまって三回くらい言っただろ」
「んなもん、きぃキコっ……聞こえんっ……! おま、なんで、いつから」
パンツを上げたいのに、なぜか勃起がおさまってくれない。カゲの視線が、手で隠したそこに注がれているのがわかる。焦りすぎて身体中から汗が吹き出していた。
「今日は親父の腹の調子が悪かったんだ。買い物の途中で、もう帰るって行ったから送ってきた」
ありえんやろ! 親父さんワガママすぎる、姫か!?
「それで、帰ってきたらお前がそこで乳首いじって遊んでたから、しばらく見てた。いつ気づくのかって」
乳首のくだりから!? だいぶ長い間見てるやんけ! やめろ、やめてくれ、記憶から消せ……!
「はわ、ほわあぁ……!」
色々な思いが頭を駆け巡ってはいるものの、口からは空気の抜けるような音が漏れるだけで言葉にならない。中腰で固まる俺の、頭のてっぺんから足まで視線を巡らせると、カゲは口の端を上げて小さく笑った。
「続きをしないのか?」
「アホか! やるわけないやろ!」
「どうしてだ? 一人で耽ってる庄助も可愛いのに……猿みたいで」
「うっさいわ!」
カゲは、ペットボトルをゴミ箱に捨てると、ネクタイを緩めながらこちらに歩み寄ってきた。
「見せてくれないのか?」
一歩、二歩。狭い家の中は、カゲの長い足だとどこへでも数歩で事足りる。俺のすぐ後ろにはソファがあるため、後ずさる場所がない。腰だけが情けなく引ける。背中を丸めて股間を隠す俺の顎を掬い上げるように、カゲの手のひらが触れてきた。
「勃起してるの見せろ」
「んなっ……!? いやや!」
「無理矢理見られる方が好きか?」
「ちがう……っ」
「じゃあ、見せろよ。手ェどけろ」
この感じ、あかんやつや。もうほんま、どういうわけか俺は、カゲにこうやってじっと顔を見られながら低い声で意地悪な命令をされると、あかんようになってしまう。
恥ずかしいし嫌やのに、背筋がゾクゾクして、脳みその真ん中が火のついたロウソクみたいに溶け落ちてゆく。
目眩のような熱い奔流に、軽く腰が砕けそうになる。そろりと手を退けると、だいぶおさまったとはいえ、ゆるく勃起し続けているそこが空気に触れた。
目いっぱい顔を逸らして、射るようなカゲの視線から逃げた。首の裏の太い血管から、耳の先っぽに血が集まってくるのがわかる。
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