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【番外編】庄助の有意義な休日⑤*

「一人でしてたのか?」 「……悪いんかよ」 「いや、性欲旺盛だなと思って。いつも、あんなに抱いてるのに、足りないのか?」  裏筋を、指のごく先端でそっと撫で上げられて声が出た。 「っ……ひとりでするのと、セックスはまたちゃうし!」 「そうなのか?」  トンと胸の真ん中を押されて、俺はソファに尻もちをついた。そのまま肩を抱き込むようにホールドされて、反対の手でパンツをスウェットごと奪われた。抗議の声を荒げる間もない早業で、俺の下半身は素っ裸になった。 「ひぎゃ、やめろっ……! もうええって!」  もがく俺の耳に唇をくっつけて、カゲは囁く。 「俺の前でオナニーしてみせてくれ」  凶器みたいな低い声は、耳の穴から入り込んで首筋のうぶ毛を逆立てた。そうされるともうその一帯が、吐息をあてられただけでバカみたいに感じるようになってしまう。カゲの声はずるい。 「イヤじゃ、アホぬかせ!」 「俺は傷ついてるんだぞ、庄助。お前が、俺以外の人間で勃起してるのを見て。この浮気者」  カゲは、ソファベッドの上に置き去りになったスマホを顎で示してみせた。そんな拗ねたみたいな声を出されると、不覚にもちょっと可愛いって思ってしまう。 「浮気て……俺かて、エッチなもんくらい観るわ。それにカゲかて」 「ん?」 「一人ンときは、シコネタ探してからシコるやろ……?」  俺の質問に、カゲは呆れたような声を出してみせた。 「バカなのか? こんなに週に何度もお前とセックスしてるのに、一人でする必要ないだろ。俺は庄助と違って、そこまで性欲は強くないんだ」 「お前だけには言われたなかったわ!」  異常者に異常な性欲と言われてしまって愕然とした。お前こそ、ほっといたら一日に何回も、もうやめてくれっていう気力と体力すらなくなるまでガン突きしまくるくせに! 人の直腸を好き勝手するやつのほうが異常やろが。直腸やぞ、直腸!   「俺は庄助にしか興奮しないのに」 「ちょ、あ……っ」  首筋に唇をぴたりとつけて話す音が、骨を伝わってゾクゾクする。裸の尻に押しつけられるスラックス越しのカゲのちんこが、もううっすら硬くなっているのがわかる。  手を取られて、自分のを握らされる。肩の上にカゲの顎が乗ってて、いつものシャンプーの香りの間から、ほんのり外気の匂いがした。 「変態っ……」  重ねた手を上下に動かすようにされて、腹にぐっと力を入れて声を堪える。ぬめっていたそこが立てた音が、やけに大きく聞こえた。  恥ずかしすぎて自分から手を動かそうとしない俺に、カゲはあっさり焦れたのか、シャツの下に手を這わせてきた。 「おい、あかん……って」 「手伝ってやるから、ほら。手ェ動かせ」 「いらんわボケ……んひっ」  まだ柔らかい乳首にカゲの指が触れる。ごく優しく乳輪ごと先っぽをふにふに弄ばれて、むず痒い感覚に身体が跳ねた。  さっきも想像してた、カゲの指。切りそろえた爪の先で引っかかれたら、声すら抑えられんくなる。 「は……あっ、あきゅぅっ……」  乳首の根元に指先を埋めて、ほじくり返すようにされると、直結するように股間に血が集まってゆく。もどかしくてたまらなくて、ちんこをしごきたくなってくる。 「気持ちいいときの顔してる」 「んっ、ん……よくな、いわ」  雰囲気と快楽に圧され負けて、俺はとうとうゆるく握った手を動かした。滲み始めた視界に、カーテンからこぼれる、外の昼間の白い光が痛い。  カゲに乳首を弄られながら、自分でちんこを擦っている。ようわからんけどやらしくて恥ずかしい状況に、頭がクラクラした。心臓の音が漏れるほど大きい。

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