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【番外編】しょこら姫と、反社のプリンスさまっ!☆ぼ〜なすとらっく★⑤
庄助がエレベーターから出ると同時に、三階のユニバーサルインテリアの事務所の扉から、眉間にシワを寄せた向田が出てきた。
「クソがっ……、これじゃあ赤字じゃねえかあのカワウソ野郎」
薄い茶封筒を手に、ユニバーサルインテリアのロゴの入った立て看板へ、小さく蹴りを入れる。すぐそこに庄助がいることも知らずに。
「人の店借り切っといて、な〜にが『とんこつラーメンなんて経費に入るわけないでしょ』だ。ムカつく顔しやがって、だいたい……」
「向田さん」
「おわーっ⁉」
声をかけると、向田は飛び上がった。その驚きっぷりに、逆に庄助も目を丸くする。
「急に話しかけんじゃねえよ、バカ」
「目の前におったやないですか」
先輩ヤクザだというのに生意気に言い返すが、向田の反応は慣れたものだ。向田と庄助の間柄は、それはそれで特殊なものだった。
「昨日はありがとうございました! めっちゃ楽しかったです!」
「わかったわかった、声がでけえわ」
直角に頭を下げた庄助のつむじを見下ろしながら、向田は嫌そうな顔をした。
「ホストのお兄さんたちにもよろしく言っ、えーと……おっしゃる、違うな……あっ。よろしくお伝えください!」
慣れない敬語がなかなか出てこず、四苦八苦する庄助を見ていると、どうも毒気が抜かれてしまう。ボスの国枝に諸経費を差っ引かれた腹いせに、文句の一つでも言ってやろうとしていた出鼻をくじかれ、向田は言った。
「なンだよ、機嫌よさそうじゃねえか」
「へへ。向田さんのおかげですやん」
「自腹でならいつでも遊びに来ていいぜ、しょこら姫」
「姫はもう廃業しましたんで結構です。それに……」
それに? と向田が先を促すと庄助は、まだ暑いのに妙に襟の詰まったシャツの首元をさすった。
ホストクラブでのパーティーは楽しかった。悔しいが、それは事実だ。けれど、わざわざ景虎をハラハラさせてまで遊びに行くのも、なんだか違う。何より、面倒くさいし。
「やっぱ、なんもないです」
「なんだよキメェな。はいはい、じゃあまたキャバの方にバイトしに来いよ。変態にケツ揉まれにな」
すれ違いざま、庄助のジーンズの尻をはたく。庄助はすぐさま尻を押さえ、振り向いた。セクハラ! と叫んだが、向田はすでにニヤニヤと厭な笑みを浮かべながら、エレベーターに吸い込まれてゆく途中だった。
「……ヤキモチ焼きの王子様は一人で十分やからな」
ひとり、取り残された廊下でごちる。
服の下には牙の跡。愛されて重く怠い身体に窓から入り込むぬるい風が心地よかった。
スマホを取り出し、アルバムを開く。昨日のバカ騒ぎの写真を国枝たちにも見せてやろうと、庄助は元気よく、ユニバーサルインテリアの扉を開けた。
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