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17.※蹴り、鞭打ち

「誰がそうしろと言った」 「ぐ⋯⋯ッ」 固い床に叩きつけられ、痛みに身動ぎしている愛賀に蹴りを入れた。 「俺はガバガバクソマンコに挿れろって言ったんだよ! それなのに、お前は道具を使いやがってッ!」 「⋯⋯ッ、ごめっなさ⋯⋯ッ、ごめんっなさ⋯⋯っ!」 「謝るなら、俺の言う通りにやりやがれ、この底辺が!」 「⋯⋯う⋯⋯ッ」 今度は鞭を打ち、その際に咄嗟に頭を両手で守ったが、それが気に食わないようで両手に振り下ろしてくる。 手まで痛めつけられてしまって、こんな傷だらけでみすぼらしい姿、見せたくない。 「⋯⋯興醒めだ」 いつまでも打ち続けられ、痛みを堪えながらも必死に謝っていると不意にそう言って、シャワーの蛇口を捻ったようだ、大量の水が愛賀の身体を打ちつける。 視界が悪くなっていく中、おぞましい影が離れていくのをぼんやりと見つめていた。 「まだお仕置きは終わってないからな」 ふと立ち止まった客がそう言い放ち、シャワーの水を大量に浴びたせいも相まって、身を震わす。 「次に会う時まで手枷を外すなよ。勝手に外すようなことをしたら、今日以上のことをする」 水の音でかき消されそうになっていた客の言葉を辛うじて聞いた。 何をしたってこの枷は鍵がなければ外すことも叶わない。 この部屋でさえ容易に出られないというのに、その上に手も自由に奪われるだなんて。 否、愛賀は自嘲した。 そもそもこの身体も自分のものではなく、素性の知れない人達のものであって、手を戒められ、排尿するのも困難なほどに痛めつけられ、ここに転がされても厭わない玩具なのだ。 何言われても、何も思わず、言う通りにしていれば、ただ時間が過ぎていくだけのはずなのに、玩具程度の自分が何かを思ってしまったから、こんなことになってしまった。 感情を抱いてしまった自分が悪い。痛いと思ってしまった自分が悪い。言う通りにしなかった自分が悪い。何もかも自分が悪い。 考えていても、終わりもしない地獄から抜け出せるはずがないのに。 「⋯⋯しゅ⋯⋯が⋯⋯さ、ん⋯⋯」 それでも、誰かに会いたいと思うことだけは赦されるでしょうか。

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