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第28話 【ディエゴ視点】謝りたい

「言えるかよ! タマだのケツの穴だの洗い倒されてみろ! 今さら獣人です、って……」 そう言ったとたん、ラスクがびっくりするくらい真っ赤になって俯いた。今の今まで怒ってたのに、急に怒りのオーラが消えて恥ずかしそうな困ったような雰囲気になったもんだから、俺も思わず口をつぐむ。 「ご、ごめん……」 「い、いや、犬だと思ってたんだから、しょうがないとは、思ってる。でもその、恥ずかしくて獣人だとは言い出せなくなったっつうか……あの、悪かった……」 つられてこっちまで歯切れが悪くなってしまった。 お互いに目を逸らし、もじもじし合う事数分。ついに家主であるラスクが口を開いた。 「えと……とりあえずお茶淹れるから、座ってゆっくり話そ」 「そ、そうだな!」 もちろん俺も全力でそれにのっかった。ラスクが背中を向けてお茶の用意をしてくれてる間に、俺なりに言うべき事を一生懸命にまとめる。俺は群や仲間を大切にする狼獣人には珍しく、人付き合いが苦手で言葉だって上手くない。 でも、ラスクに嫌われてこの居心地のいい関係性が永遠になくなるのだけは勘弁して欲しい。 「お待たせ。ハーブティー大丈夫?」 「問題ない」 コトリと目の前にハーブティーが置かれて、その横に俺が大好きなビスケットが添えられている。 やっぱり優しい。ラスクはこんな風に、俺が喜んで食ったものはすぐに覚えてくれて、忙しいのに市場で買って来てくれてるんだよな。 俺が獣人だと分かっても、変わらずになされるちょっとした気遣いに、俺は鼻の奥がツーンと痛くなった。 許してくれるまで、誠心誠意、謝ろう。 「……ラスク、本当に悪かった。ごめん。あと、助けてくれてありがとう」 「え」 本当ならあの日言うべきだった感謝の気持ちを伝えたら、ラスクはなぜかポカンとした顔になった。 「ラスクがいなかったら俺、間違いなくあの日命を落としてたと思う」 「あー……ああ、ポーションか」 「そのおかげで命拾いした。それに、グラスロと戦っている時もサポートしてくれたの、本当に助かったしすごい嬉しかった」 「グラスロって、あの銀の鬣の魔物? サポートって言ってもポーション使ったくらいだけど」 「かなり劣勢だったしあれがなかったら多分負けてた。それに、拘束魔術も使ったんじゃないか?」 「確かに拘束魔術もつかったけど、ほとんど効いて無かったと思うよ? 僕のサポートなんてあってもなくてもそこまで変わらないでしょ、大袈裟だなぁ」 「大袈裟なもんか!」

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