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第29話 【ディエゴ視点】正直に言ったのに
思わず勢い込んで言ってしまった。
「あの一瞬があったからグラスロを仕留められた。それで……それで、人間ですらない死にかけの俺にポーションを使ってくれた上に、あんな戦いに参戦してくるようなラスクに興味が湧いて……俺」
「それでついて来たの?」
その問いに、俺は小さく頷いた。ある意味事実だからだ。
でも。でも、ちょっとだけ言い訳させて欲しい。
「ラスクに興味があったし、俺にとってラスクは命の恩人だから、ついていけば何かラスクの助けになれるんじゃないかと思ったんだ」
「あ、もしかしてそれで素材とか食料とか獲ってきてくれたのか。でもさ、あのグラスロって言うの? あの魔物の報酬だけで僕、何年分か働いたくらいの額貰ってるんだけど。ていうかあの報酬返さなくっちゃね」
「あれはラスクが貰うべき報酬だから俺はいらない。ラスクがいなかったらそもそも倒せてない」
「でもどう考えても僕が倒せるわけもない魔物だよ。しかもあの銀の鬣、薬にも使えるレア素材だったから、それだけでもう充分だけど」
「そうか! 役に立ったなら良かった。とにかくあの報酬はラスクが好きに使ってくれ。このところ獲ってきていた素材は、その……ラスクの助けになるどころか俺、迷惑かけてる自覚があったから……詫びのつもりもあって」
正直に言ったのに、なぜか急にラスクが笑いだす。
「急にしおらしい! ワンコの時はあんなにしっかり色々要求してたのに」
「獣化してる時は、欲望の方が優先されるんだよ……」
肩を落とす俺とは逆に、ラスクは徐々に緊張がほぐれて来たみたいで、いつもみたいな笑顔になった。その顔を見てるだけでホッとする。
「本当は少しラスクの様子を見て、礼になるような事をしたらすぐに帰るつもりだったんだ。でも……」
「え。あ、でもそっか、そうだよな。ディエゴにだって普通に生活があるんだもんな。ディエゴってやっぱり冒険者なの?」
「ああ。普段はルコサの街を拠点に活動してる」
「ルコサって確かめちゃくちゃでっかい港街だよね。あんな遠いところ!?」
「走ればすぐだ」
「さすが獣人、『すぐ』の距離感がおかしいんだよなぁ。ちなみにランクはいかほどで」
「Aランクだ」
「Aランク!!?」
ラスクはわかりやすく驚いているが、もうすぐSだ。
ただS級ともなると国やらの依頼が頻繁に入り始めて不自由になるとも聞く。ラスクに会えなくなるくらいなら、もうしばらくAのままでいいような気持ちになってきていた。
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