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第30話 【ディエゴ視点】ラスクの役に立ちたい
「すごいなディエゴ、Aランク冒険者なんてこの街にはいないよ。Bランクだっているかどうかじゃないかなぁ」
「だろうな。このあたりは魔物もそう危険なヤツはいないし」
「だよね。あ、でもこの前のグラスロ? はA級の魔物だってアンドルーさんが言ってたけど」
「悪い、あれは多分俺を追ってきたんだ」
「あー道理で。でもあんな魔物を倒せるなんて、本当にディエゴって強いんだな」
……どっちかっつうと、Aランクのくせにグラスロなんかに殺られそうになってたのが恥ずかしいくらいなんだが。
でも、ラスクがすごい、強いと思ってくれるんならもしかして。
ラスクの言葉に勇気を貰って、俺は考えていた事を口に出してみることにした。
「あのさラスク、お前、エリクサー作れるようになりたいって言ってたよな? 俺と一緒に旅に出てみる気、ねぇかな」
「へ!!???」
当たり前だけど、ラスクは想像した事すらなかったんだろう。すっとんきょうな声を上げる。
「いや、考えたんだけど俺ならラスクの事守りながら旅できるし、他のやつ雇うよりは気兼ねしなくていいんじゃないか? 時々この街に戻りたいなら俺の背中に乗ればあっという間に戻って来れるし」
考えていた事を一気に言い切って、ホッと息をつく。
「……俺、ラスクの役に立ちたい」
ぽかんとしたままのラスクを見ていたら、ついそんな言葉が出ていた。そんな俺の言葉を聞いて、ラスクはふふっと楽しそうに笑う。
「ディエゴって義理堅くていいヤツだったんだなぁ」
姿を偽って傍にいたというのに、ラスクは笑いながらそんな事を言ってくれる。ありがたいけどお人好し過ぎてちょっと心配なくらいだ。
「でもさ、僕の役に立とうなんて考えなくていいんだよ。僕もう充分にお礼貰ったし役に立ってるよ」
あ、と思った。
今の顔、俺が狼のままだったら絶対に頭撫でてくれたと思う。人型になったのがちょっと残念だった。
「せっかくだけど、僕はもうしばらく師匠の元で学ぼうと思ってるんだ。ディエゴのおかげで旅の資金はできたけど、僕はまだ薬師として知識をつけなきゃいけないからさ」
「じゃあ、それまで俺もここにいる」
「へ?」
「ラスク、俺との生活、気に入ってるって言ってくれたよな? 俺もラスクと一緒に暮らすのがあんまり居心地よくて楽しかったから……もうこのまま飼い犬として暮らすのもいいかってちょっと思うようになってた」
「は!!???」
ラスクが目を剥いた。俺の提案はなかなかに衝撃だったらしい。
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