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第31話 【ディエゴ視点】もしかして本気?

「いや、ダメでしょ。Aランクだよ!? それだけ優秀な冒険者なら依頼だっていっぱいあるだろ」 「別に……依頼なんて俺が受けなきゃ他のヤツが名を上げるために受けるだけだ」 「勿体ないよ! Aランクなんて、なろうと思ってもなれないランクなんだろ? まったくもう、何言ってんの」 「狼だったらいいか? 狼になろうか?」 「なんで急に!? ていうかダメ! ほだされる! 絶対ダメ!」 なるほど、いざとなったら狼姿になって居座ろう、と悪い考えが頭をよぎる。どうやらラスクは俺が狼姿だと強く言えないらしい。良いことを聞いた。 「……じゃあ、依頼をこなして来たら飼ってくれるか? どうせ昼間はラスクがいなくて寂しいし、今までみたいに軽く狩りに行ったり依頼こなしてきたりしてもいい」 「……」 「ラスク?」 「……え、ディエゴ、もしかして本気?」 俺はしっかりと頷いた。 「他人と一緒にいてこんなに楽しかったのは初めてだから、一緒にいたい」 「……!」 ラスクがまた赤くなって、困ったように笑った。 「そんな事言われたの初めてだから、なんか照れ臭いな」 「俺も初めてこんな事言った」 「……」 「ダメか?」 「ああもうっ! そんなしょんぼり耳されたら断れないだろー!」 「えっじゃあ」 「いいよもう、そんなにここが気にいったなら、居ていいから」 「ホントか!? 俺、ちゃんといい子にする!」 「いい子って。ちゃんとペット目線」 「狼姿の方が撫でて貰える。甘え放題だし」 オレがそう言ったら、ラスクは楽しそうに笑った。 「見た目はイケメンなのに、性格はやっぱ真っ黒ワンコのままなんだよなぁ」 当たり前だ。どっちの姿だろうが俺なんだから。 「僕としてはこんな風に話せるのも楽しいけどな」 「獣化してる時でも話せはするぞ。ちょっと話しにくいし考えるのが面倒にはなるけど」 「へぇ、そんな違いが」 「どうせ人型でいるなら恋人の方がいい。恋人になってくれるか?」 「はえっ!!!???」 「さっきアンドルーとかいう男と一緒に帰って来た時、めっちゃハラ立ったし」 「ええ? いや、ちょっと待って」 「好き。番になりたい」 「いやいやいや、え、急に???」 「急じゃない。獣人が食い物を貢ぐのは求婚の証」 「はぁ!?」 「食ってくれたらOKの証」 「えええ!? いや、知らなかったし」 「分かってる。だから改めてちゃんと言った。今すぐじゃなくていいから、考えて欲しい」 「待って……混乱し過ぎて、ちょっと頭が追いつかない」 ラスクの様子に俺はとんでもなく嬉しくなった。

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