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第32話 【ディエゴ視点】気にしない
だって、困ってはいるけど嫌がってるわけじゃない。これは、押せばいける気がする。
俺はラスクの空色の目を真っ直ぐに見て言った。
「いっぱい大切にする」
「え……いや待てよ、お前オスだろ。僕も男なんだけど」
「別に珍しいことじゃないし俺も気にしない。好きなヤツと一緒にいる事の方が大事」
「……」
ついにラスクが真顔になった。やっと本気だと分かってくれたらしい。
「まいったなぁ。マジかー……」
「ほんき。大マジ」
耳の先までピシッとして、俺イチ真剣な顔で言ったら、ラスクも腹を括った顔をする。
「分かった。ちゃんと考える」
「おう!!!」
良かった! 断られなかった! 内心ホッとした。
「とりあえず腹減ったし、飯でも食お。作るの途中になってたし」
俺の気持ちを聞いてもなお、一緒に飯を食おうと言ってくれるラスクの度量の広さにまた惚れる。やっぱり俺、一緒になるならラスクがいい。
「俺も手伝う!」
いいとこを見せようと思って立ち上がったら、ラスクの目がまんまるになった。
「えっ、ディエゴって料理できるの!?」
「そりゃまぁ」
ささっと手を洗い、料理途中で放置されたジャガイモをくるくるっと剥いて見せたら、ラスクは「おおっ」と感嘆の声を上げた。
「野営もするし、基本ひとり暮らしだったしな。さすがに生肉はできるだけ食いたくないし」
「そっか、ワンコの時も焼け、味付けしろってうるさかったもんなぁ」
「味付けはラスクのヤツの方が好きだから、そこは頼む」
「……お前、モテそうだな」
意味が分からなくて首を傾げたけど、ラスクがどことなく嬉しそうだから、まぁいいか。
まだ数日しか一緒に暮らしてないけど、ラスクが作ってくれる飯がうまいのは本当だし、「美味いか?」って頭撫でながら聞いてくれるのも好きだ。
俺が尻尾を振って「わふっ」と答えるだけで心底嬉しそうに笑ってくれるから、なんかもうそれを見てるだけで一生飼い犬のままでいいって思えてた。
二人でやれば飯の準備なんてあっという間で、ラスクから聞かれる俺のこれまでの事をあれこれ答えているうちに、ごろごろ肉と色とりどりの野菜が入ったシチューとホーンラビットの蒸し焼きができあがる。
「今日も美味そうだ……」
思わずじゅるりとよだれが出た。
「あはは! ディエゴは人型になってもやっぱディエゴなんだな。目がキラキラしてる」
「それは仕方ない。美味そう過ぎる」
「お前の耳とかしっぽが嬉しそうにフリフリされるの、好きだなぁ」
「それも仕方ない。勝手に揺れる」
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