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第33話 【ディエゴ視点】この顔が見たかった
「あはは、だよなぁ。どうだ? 美味いか?」
「美味い! 最高に美味い。いつも思ってたけど、なんか嗅いだことのない匂いとか味がある気がするんだよな……」
「すごいな、ディエゴ! 分かるんだ……!」
ラスクは目を見開いて驚いてから、いつもの心底嬉しそうな顔をしてくれた。
良かった。この顔が見たかった。
不思議な匂いと味の正体は、ラスクが採ってきて乾燥させてつくったオリジナルのハーブらしくて、ちょっとした自信作だったらしい。道理で嗅いだ事が無いと思った。
「隠し味的にちょっと入れてるだけなんだけど、やっぱ鼻がいいんだなぁ」
なんて、ラスクは相好を崩す。
すっかり上機嫌になったラスクは今まで以上にたくさんの事を話してくれた。返事が返ってくるのが嬉しいんだろう。ラスクがすごく楽しそうだから、人型も悪くないと思えた。
楽しく飯を食って、一緒に茶碗を洗う。これまでは世話をかけてばかりだったから、こうして一緒に色々できるのはすごく嬉しい。
ふたりでいっぱいしゃべっていたら、すっかり月の位置が動いてしまった。この高さだと日付が変わる頃かも知れない。
「ラスク、楽しくてしゃべり過ぎてしまった。もう日が変わる頃かも。そろそろ寝ないと、明日の仕事が辛くないか?」
「ああ、大丈夫。僕、明日と明後日は仕事が休みなんだよ」
「なんだ、そうか」
「でも今日はお風呂ももう入ったし、そろそろ寝よっか」
「そうだな」
「あ、そうだ。ディエゴがここに住むなら荷物とか持って来なくていいかな。手伝った方がいいなら、明日引越しの手伝いしてもいいけど」
「嬉しい。ルコサの街から必要なものだけ持ってくる。ラスクも一緒に行こう」
ベッドへ向かうラスクの後ろを当然のようについて行く。何にも考えていないらしいラスクがベッドに入ると同時に、有無を言わさずその隣に身を沈めた。
いつものようにラスクの体にピト、と丸めた背中を当てたら、ラスクの体が分かりやすく強張る。
いつもは俺の腹に手を回してもふもふしてきたりするけど、今日は毛がないから戸惑っているのかも知れない。
「……そっか、いや、そうだよね……」
ラスクの呟く声と同時に、背中を伝って振動を感じる。あったかさとラスクの匂いと僅かな振動。番にしたい、と思っている存在をこんなに近く感じると無条件に色々高まってくるのは仕方が無い。
断る暇を与えなかっただけではあるけれど、曲がりなりにも今日は自分の気持ちを伝えた上で同衾を許されているわけで。
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