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第44話 ヤクルさんとディエゴの挨拶
僕はアンドルーさんに目線を合わせ、できるだけ真摯にお願いした。
「アンドルーさん、お願いがあるんですけど」
「おう、なんだ」
「このドラゴン、すっごいお肉が美味しいらしいんです。あとで心配かけたお詫びに街の人にこのドラゴンの肉を配ろうかと思ってるんですけど、ギルドでご協力お願いできますか?」
「いいぜ。あとでギルドから理由も添えて配布するようにしよう。ギルドとしてもこんな大物の流通を任せて貰えるなら充分に釣りが来る」
「良かった……ありがとうございます」
「そんじゃここは俺が治めとく。お前達はヤクルと一緒に先に家に入ってろ。俺も人を散らしてから他のギルド員つれてくる」
「ありがとうございます!」
僕は心底ホッとした。
アンドルーさんが集まった人たちに事情を軽く説明してくれるのに合わせて、僕は深々とお詫びする。
「皆さんお騒がせしてすみませんでした!」
僕が頭を下げると場の空気も和らいで、三々五々と人々も散っていった。それを見て安心した僕はあとはアンドルーさんに任せて、ヤクルさんとディエゴを連れて一緒に家に戻る。
さっきアンドルーさんが『人を特定して結界を張ってる』的な事を言っていたけど、本当にディエゴはそんな事ができるらしく、驚いたことにアンドルーさんとヤクルさんだけは結界を通れるようになっていた。
「お前ってやっぱ凄いんだな」
家に入りながらディエゴを見上げてそう言ったら、ディエゴはもの凄く嬉しそうな顔で笑った。
しっぽが思いっきりフリフリされてるの可愛い。
家に入って扉が閉まるなり、ヤクルさんがたまりかねたように聞いてくる。
「なになに、何が起こってるんだい?」
「すみません、色々と驚かせてしまって」
そう前置きして、僕は事情を説明する。
「えっと……『真っ黒ワンコ』が実は獣人で、今ここにいるイケメンだって事はさっきも話したと思うんですけど」
「うん、獣人でAランク冒険者で、外のドラゴンも彼が狩ってきたんだってとこまでは理解した」
「ちなみに不審に思ってた、朝起きるとテーブルの上に獲物が置かれてる事件の犯人もコイツでした。宿代と迷惑料のつもりだったみたいです」
「あー……なるほど」
「あ、ディエゴ、この方はヤクルさん。僕が働いてる薬店の……お師匠さんの息子さんで兄弟子だよ」
「そうか、ラスクが世話になっているんだな。ありがとう、ラスクの事をよろしく頼む」
右手を差し出すディエゴを見て、僕は色んな意味でびっくりした。
挨拶するんだ。意外と常識的。
ていうか僕の保護者目線なの、なんなの?
でもその割には上からみたいな言葉遣いなんだけど。
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