fujossyは18歳以上の方を対象とした、無料のBL作品投稿サイトです。
私は18歳以上です
【完結】ざまあをください。 10.君がいない未来 | 那菜カナナの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
【完結】ざまあをください。
10.君がいない未来
作者:
那菜カナナ
ビューワー設定
10 / 19
10.君がいない未来
永良
(
ながら
)
の
顎
(
あご
)
に力が籠る。目も伏せて、眉間に皺も寄せて。 嫌がってるの? それとも困ってるの? 「お前は……っ」 お前は? 原因は僕? 「だああぁあああああ!!!」 「っ!!?」 永良が大声を上げた。耳がキンキンする。 「~~っ、何? いきなり――」 「俺はお前を『ざまあ』する男だ!!」 「えっ? あっ、うん。そうだね」 戸惑いが力を奪う。永良はその隙を逃さずに僕の手を払いのけた。 「だっ、だからお前とは馴れ合わねえ!」 それが君の本心なの? だったら何で、何でそんな悲しそうな顔をしているの? 「永良――」 「~~っ、じゃあな!」 「あっ! ちょっと」 永良が駆け出した。慌てて後を追う。早い。全速力で走っているのにまるで追いつけない。それどころかどんどん引き離されていく。 「待って!!」 『ドアが閉まります。ご注意ください』 永良は電車に駆け込んだ。電車が動き出す。僕だけがホームに取り残された。 「はぁ……はぁ……無理……っ」 膝に手を突く。肩が上下に揺れてる。呼吸も乱れたままだ。 「ゴホッ! ゴホッ!」 しまいには
咽
(
む
)
せ出した。酷くみっともない姿だ。無様にも程がある。 「ハァ……っ、ハァ……くっ……何なの……っ」 あの分だと100m11秒台もあり得そうだ。そのぐらいとんでもない速さだった。 因みに僕は100m15秒5。平均よりも遅めだ。 「君、取り組む競技間違えてない?」 陸上に行っていたら、間違いなくスター選手になっていただろう。 「間違え? ……っ!」 背筋が凍った。まさか。そんなわけないと内心で否定する。けど、その声はどんどん小さくなっていく。 「スカウトなんてされてないよね?」 永良はまだ15歳。中学3年生だ。あのポテンシャルならきっと間に合う。 競技によっては熱心に勧誘してくるところもあるかもしれない。それこそ陸上とか。 「まさかそれで……?」 それで消極的なの? 僕と仲を深めることに。
次
が
も
う
決
ま
っ
て
い
る
か
ら
。 約束を果たしたら、あるいは切りの良いところで消えるつもりなの? 「~~っ、そんなの絶対に許さないから」 僕は近くにあったベンチに乱暴に腰かけた。そのまま水筒を取り出してがぶ飲みする。 「……………………っ、嫌だからね」 永良がいなきゃ意味がない。……意味がない。…………何で? 「……何でだ?」 僕は顎に手をあてて思案し始めた。 Q1:永良にこだわり続ける理由は? A1:僕にとって永良=主人公だから。ギラギラな僕を誰よりも純粋に求めてくれている人だから。 Q2:『ざまあ』された後は? ギラギラな僕を取り戻した後は? A2:永良と――。 「仲良く……なりたい」 だからか。だから、永良がいなきゃ意味がないんだ。
見
返
り
を永良に。友愛を求めているから。 「本当、勝手だな」
漸
(
ようや
)
く理解した。いや、認めたと言った方がいいのかもしれない。 まずは一歩。 問題はここからだ。 「……どうしよう」 永良が転向を希望したら。その時はやっぱり止めに入ってしまうのかな。行かないでって駄々を
捏
(
こ
)
ねてしまうのかな。 「……付いて行けたらいいのに」 そんなの無理に決まってる。ただ思うだけ。願望だ。 ははっ、ダメだ。考えが纏まらなくなってきた。この件は一旦置こう。 誰もいない地下鉄のホームで溜息をついた。外気に触れて徐々に冷たくなっていく。心も。体も。全部。全部。
前へ
10 / 19
次へ
ともだちにシェアしよう!
ツイート
那菜カナナ
ログイン
しおり一覧