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ぱち、と目を開けた。
いつもならばなかなか目覚めないが、今日だけは違った。
急いで枕元を見ると、愛賀は目を輝かせた。
赤地にクリスマスツリーやサンタなどが描かれた包装紙がそこに置かれていたのだ。
『きたぁ!』
その大きな包みを持って、階段を駆け下り、リビングへと直行した。
そこには朝食を準備している母親と席に座り、テレビを眺めている父親の姿があった。
『おとーさん! おかーさん! ぼくのところにサンタさんがきたよ!』
勢いよくやってきた息子に驚きを隠せないでいる両親であったが、掲げている物を見て目を細めて笑った。
『良かったねぇ。愛賀がいい子だったからサンタさんが来たのよ』
『ねぇねぇ! 開けてもいい?』
『いいよ』
母親の返事を聞いた後、待ちきれないといったように大雑把に包装紙を破り、その包まれていた物を見て愛賀は歓声を上げた。
『ぼくのほしかったやつ!』
『欲しいものがもらえて良かったな。サンタさんにお礼を言わないとな』
『うん!』
食べるのをそっちのけで遊ぼうとする息子に母親が「こら、食べてからよ」と言われたが、その顔は綻んでいた。
その特別な日はとても楽しみで、嬉しくてもらった物も大切にしていた。
──オメガという第二の性になるまでは。
日常の一部と化した両親のいさかいを聞きたくないと耳を塞ぎながら思った。
『⋯⋯僕がオメガになっちゃったから、いい子じゃなくなったから、サンタさんからプレゼントはもらえない⋯⋯』
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