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寒さも本格的になってきた十二月下旬。
ほどよい暖かさに包まれた部屋のベッドで、頬を赤らめていた姫宮は潤んだ瞳を天井に向けていた。
姫宮は熱を出していた。
しかもその熱はただの熱ではない。
定期的に訪れる発情期 の兆候によるものだ。
定期的に来るのは仕方ない。自分が最も卑しい性になったのだから。けれども、特別な日の前日に具合が悪くなってしまうだなんて。
あの日からオメガになったことで自分が"いい子"でなくなったから、それを知らしめるために来たのだろう。
今まではそれをどうでもいいと思っていたが、今はその性を酷く嫌悪した。
重たいため息を吐く。
「姫宮様。お身体の具合はいかがでしょう」
そばにいた今井が静かにそう訊ねた。
「身体が熱くて⋯⋯ですが、大したことではありません。⋯⋯いつものことですから⋯⋯」
「そんなことはないでしょう! 呼びに来ましたら、今のように苦しそうにしていたのですから! 普通の熱の時もそうですが、ご自身のことをもう少し労わってください。それから、私達のことをもっと頼ってください。むしろ頼って頂けましたら、私は喜んで──」
「はいはい分かりましたから、今は姫宮様のことを思って、静かにして頂けたら特に私が助かります」
いつになく輪にかけて心配する安野を今井が適当に宥めるのをどこか他人事のように眺めていた。
「私のことはどうかお気になさらず」とこれ以上二人に迷惑をかけたくないとそんな言葉を掠れた声で言いかけた時。
ゆっくりと扉が開く音が聞こえた。
いつもであれば、入る時、ノックして姫宮が返事をしたら入ってくる。
誰なのだろうと、言い合っている二人を尻目にそちらにゆっくりと目を向けた。
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