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6.
微かに物音がしたような気がして、うっすらと目を開けた。
あの後、泣き疲れたようで姫宮自身気づかないうちに寝てしまっていたようだった。
帳が下りた薄暗い部屋の中、ゆるゆると視線と動かしていると、おかしいと思うようなことが姫宮の目に映った。
立場上、常に仕事に追われている御月堂がそこにいたのだ。
「夢⋯⋯?」
鉛のように重く感じた手をゆっくりと上げ、その無機質な頬に触れる。
冷たい。
何故。
「すまない。起こしてしまったか」
「いえ⋯⋯」
愛おしげに目を細めた。
どうやら現実のようだ。
ということは、外から姫宮の部屋に直で来たということになる。
何故そんなことを。
また新たな疑問が生まれる。
手を下ろし、ぼんやりと見つめていると、緊張気味に額に触れてきた。
手はほんのりと暖かい。
「⋯⋯安野から愛賀が発情期 の兆候で熱を出したと聞いた。⋯⋯確かに、熱もあるし、匂いも少しするな」
「⋯⋯すみません」
「謝ることではない。ただお前が心配なだけだ」
僅かに眉を寄せる。
まるで自分のことのように胸を痛めているようで、自分なんかでそんな顔をしないで欲しいと思ったのが大半であったが、ほんの少し嬉しいとも思ってしまった。
「慶様、心配してくださりありがとうございます。⋯⋯いつもの発情期 ですから、そんな大したことではありません」
「そうであっても、お前が辛そうな顔をしていると胸が苦しくなる。一人で辛かったら、その⋯⋯また慰めてやる」
「そ、それは間に合ってます!」
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