1 / 2
第1話
俺と付き合うには5つの条件がある。まあ、嫌な顔をせずに聞いてほしい。
1、メンヘラではないこと。
2、ヤンデレではないこと。
3、ニートでないこと。
4、未成年でないこと。
5、お見合い相手がいないこと。
過去の恋愛から学んだことだ。少なくとも上記に該当しなければ、俺は案外すんなりとOKをする。
「先輩、彼氏って興味ありますか?」
その声は仕事上がりのバックルームから早々に去ろうとする俺の足を止めた。振り替えると、そこにいたのは俺の3つ下の後輩、佐久間 理央 であった。上がりの時間が一緒だったことを思い出す。背丈は俺より上。いいや、これは俺が小さいだけか。160センチもいってないのに21才っていう方が無理があるよな。
「何を言い出すかと思えば、どうしたよ?」
「いいや、純粋に気になってしまって。」
「お前の目に俺はどう写ってるんだ?」
「だって、先輩浮わついた話しとか無いじゃないですか。」
「まあ、昔色々あったんだよ。」
「色々………話を戻しますけど彼氏に興味は?」
「別に。」
「えぇ。」
「じゃあ何?お前はそう言うの興味あるの?」
「ありますよ?」
すんなりとしたその一言に狼狽えた。
「じゃあ何だ?こりゃ…告白か?」
俺がそう聞き返した。すると「別にそう言う訳じゃないですけど」と、一言置いて俺に近づいてくる。そして俺の頬を撫でて告げる。
「先輩、可愛いから。」
「…は?」
少し戸惑った。続いて身体が火照った。
「どうしたんです?顔赤いですけど?」
「いいや、何でもない。」
咄嗟に口元を隠した。目をそらす。それに気がついたのか、理央の表情が緩む。
「やっぱり、可愛い。」
「あぁ、もうおちょくるのはやめろ!」
そう言ってその手を振り払い、その場をあとにした。
冬の風がやけに心地いい。車に戻り一呼吸おく。
「あぁ………あんなん、もろ告白だろうが………。」
不覚だった。心臓が跳ねたのが解った。明日もシフトあいつと被ってんだけどな………。
――――――――――
振り払われた手を見つめる。最後の先輩の表情が頭から離れなかった。正直、死にそうだ。余裕なんてあったもんじゃない。
「やっぱり可愛いな。」
藤井 悠貴 先輩。年は僕より3つ上だけど、身長は頭1つ分くらい違う。思いきって話しかけてよかったと心底思う。明日も会える。それだけで胸の鼓動は高鳴った。
はっきり言って僕はあの人のことが大好きなのだ。どうしようもないくらいに。
ともだちにシェアしよう!