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第1話

 俺と付き合うには5つの条件がある。まあ、嫌な顔をせずに聞いてほしい。 1、メンヘラではないこと。 2、ヤンデレではないこと。 3、ニートでないこと。 4、未成年でないこと。 5、お見合い相手がいないこと。  過去の恋愛から学んだことだ。少なくとも上記に該当しなければ、俺は案外すんなりとOKをする。 「先輩、彼氏って興味ありますか?」  その声は仕事上がりのバックルームから早々に去ろうとする俺の足を止めた。振り替えると、そこにいたのは俺の3つ下の後輩、佐久間(さくま) 理央(りお)であった。上がりの時間が一緒だったことを思い出す。背丈は俺より上。いいや、これは俺が小さいだけか。160センチもいってないのに21才っていう方が無理があるよな。 「何を言い出すかと思えば、どうしたよ?」 「いいや、純粋に気になってしまって。」 「お前の目に俺はどう写ってるんだ?」 「だって、先輩浮わついた話しとか無いじゃないですか。」 「まあ、昔色々あったんだよ。」 「色々………話を戻しますけど彼氏に興味は?」 「別に。」 「えぇ。」 「じゃあ何?お前はそう言うの興味あるの?」 「ありますよ?」  すんなりとしたその一言に狼狽えた。 「じゃあ何だ?こりゃ…告白か?」  俺がそう聞き返した。すると「別にそう言う訳じゃないですけど」と、一言置いて俺に近づいてくる。そして俺の頬を撫でて告げる。 「先輩、可愛いから。」 「…は?」  少し戸惑った。続いて身体が火照った。 「どうしたんです?顔赤いですけど?」 「いいや、何でもない。」  咄嗟に口元を隠した。目をそらす。それに気がついたのか、理央の表情が緩む。 「やっぱり、可愛い。」 「あぁ、もうおちょくるのはやめろ!」  そう言ってその手を振り払い、その場をあとにした。  冬の風がやけに心地いい。車に戻り一呼吸おく。 「あぁ………あんなん、もろ告白だろうが………。」  不覚だった。心臓が跳ねたのが解った。明日もシフトあいつと被ってんだけどな………。 ――――――――――  振り払われた手を見つめる。最後の先輩の表情が頭から離れなかった。正直、死にそうだ。余裕なんてあったもんじゃない。 「やっぱり可愛いな。」  藤井(ふじい) 悠貴(ゆうき)先輩。年は僕より3つ上だけど、身長は頭1つ分くらい違う。思いきって話しかけてよかったと心底思う。明日も会える。それだけで胸の鼓動は高鳴った。  はっきり言って僕はあの人のことが大好きなのだ。どうしようもないくらいに。

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