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第2話
僕にとって、バイトは憂鬱なものでしかない。ありがちなコンビニのバイト。が、今日は天使がいるので実質チャラだ。昨日は随分と思いきったことをしてしまったが、あれは先輩が可愛すぎるのでしょうがない。
と、背伸びをしながら高い位置の棚に商品を並べる先輩を眺めながら思う。
悠貴先輩。彼を簡単に表す言葉があるなら小動物の一言に尽きる。身長は159センチ。華奢な体格。目付きは鋭いけど笑った時の涙袋が何とも可愛い。
「食べたい…。」
「お腹空いてる?休憩行く?」
「あぁ、いえ、何でも。」
パートのお姉さまとそんなやり取りを交わしつつ手持ちの仕事を片付ける。
「瀬野君。ちょっといい?」
「あ、はい。」
あのなりで仕事できるのはもう反則。可愛くて仕事も出来る。最強。だけどちょっと働きすぎな所もあるんだよな。早いときは朝の6時、遅いときは夜の1時ってそりゃあんな死んだ目にもなるよな。普通に抱き締めたい。
「………さっきから見てるのばれてるぞ。」
「あ、すみません。」
「仕事の時くらい集中しろ。」
目は会わせず、すれ違いざまに注意される。だけど顔が少し赤くなっているのは確認できた。
それから、時間は過ぎ去っていき午後8時。上がりの時間となった。バックルームで私服に着替える先輩と僕。
「なぁ、やっぱり」
そうして、時間は過ぎ去っていき午後8時。上がりの時間だ。バックルームで私服に着替える先輩と僕。
「なぁ、やっぱり佐久間って俺のこと好きなのか?」
あんなに恥ずかしがってたくせに、こういうときはすんなり聞いてくる。
「好きですよ。」
「………そうか。」
だけど、正直に話されるのには慣れてないらしい。
「俺と付き合おうとかはないのか?」
「ありますけど、そこは先輩の意思次第です。」
「………解った。スマホ出せ。連絡先の交換まだだろ。」
「えぇ!?」
「あんまおっきい声出すな。別にお前のことが知りたいだけだよ。」
平静を装ってるつもりなんだろうけど、そっぽ向いてまともに顔を見てはくれない。
「そうですか………。」
思わぬ収穫だった。まさか先輩の連絡先が手に入るなんて。
「言っとくけど、まだ付き合うって感じじゃないからな?あくまでも、俺はお前のことを知りたいだけ。」
そこまで言うと今度は俺と向き合って真剣な表情で言う。
「ちゃんと信頼できるかどうか確かめたいだけだ。」
威圧感ではないが、その言葉と表情には妙な圧迫感があった。少し言葉を忘れるほど、普段の先輩からはあまり想像できない雰囲気だった。
「…はい。」
そう溢した。僕も先輩のことはよく知らない。この表情の意味もいずれ知ることになるんだろう。
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