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第17章 第三の試練3
「エリザさん、今は悪魔を倒すのが先です。そんなことをしている暇は――」
「馬鹿ねえ! ドラゴンの末裔は先見の明が得意なのよ」
「先見の明、将来がわかるのですか?」
「そうよ、千里眼とか予知夢、予言みたいなもの。未来を見通す目よ。ドラゴンの末裔なら、占い師なんかよりもずっと説得力があるわ。あんたやあたしたちが訪れることもすでに視 ていて、ドラゴンとサラマンダーを正気に戻すためのグッズや魔王を封印したり、偽の神子を追い出す方法、あんたがさがしている英雄についての情報みたいな便利なグッズを用意してくれている可能性・大!」
「それは本当ですか!?」
僕が身を乗り出すとエリザさんが、たじろいだ。
「絶対っていう話じゃないわよ。もしかしたらっていうだけ……」
「もしかしたらで構いません! 善は急げです。早く村人から話を聞き出して、マックスさんたちと合流しましょう」
「あっ、こら。待ちなさいよ!」
英雄の手掛かりが見つかるかもしれない。その事実に僕の胸は踊った。
やった、ようやく……。
*
村人たちの話した内容を要約すると――悪魔がアドベンチャー山に住みだしてからサラマンダーやドラゴンの様子がおかしい、そして怪しい魔術を使っている道化と神官の姿が頻繁に見かけられることの二点にまとまった。
僕らはアドベンチャー山に入り、さっそくエリザさんが話していた開かずの間へ向かった。
石造りの扉の前には火のついた燭台があった。扉には「この火を消す水の化身を喚べ」と書かれていた。
再度全員で火を消す行為を一通りやってみたが、不思議なことに火はついたままだった。
「では、やってみます」
僕は詠唱し、蛟の主を喚んだ。蛟の主が水を口から吐くと燭台の火がふっと消える。ゴゴゴと音を立てて石造りの扉がひとりでに動きだした。
メリーさんがすっと中に入り、クロウリー先生が光の魔法を使って部屋を照らす。部屋の中には、小さな宝箱がひとつ置かれていた。
宝箱を開けると巻物が一本入っていた。しかし――。
「何よ、これ。まっさらじゃない」
何も書かれていなかった。
「これは……」とマックスさんとクロウリー先生が何も書かれていない巻物へ目を通す。
クロウリー先生が火の魔法を使い、紙の上に翳す。すると文字が浮かんできた。
「フェアリーランド王国の古語じゃな」
「おじい様、読めます?」
「儂は魔術師じゃぞ。考古学者や歴史学者じゃない。二千年以上前の文字なぞわからんわ」
「マックス、読めるか?」とメリーさんが問う。
「ああ、『英雄譚』だってよ。『過去』の女神に見出された赤毛の者。ルキウスのことだな」
「よかったじゃない、便利グッズ発見よ!」とエリザさんが僕の肩を叩いた。
メリーさんも笑顔で頷いている。
だけど僕は、考古学者や歴史学者でないマックスさんが二千年以上前の古代文字を読めることに、驚きを隠せなかった。
「マックスさん、あなたなんでそんな古い文字で書かれた文章をスラスラ読めるんです?」
「手慰みで勉強した。それだけだ」
そっぽを向いて彼が答える。
「それで続きはどうなんじゃ?」
マックスさんが首を横に振った。
「駄目だ、書かれていない」
「ええっ、何よそれ!?」
エリザさんが落胆の声をあげる。
「古い魔法が掛かっておるのう。サラマンダーとドラゴンの火なくては解けそうもない代物じゃ」
「師匠、巻物の続きを読むには、サラマンダーとドラゴンを正気に戻すしかないということですか?」
メリーさんの言葉にクロウリー先生が「そうじゃ」と返答する。
「ちょっとマックス、これからどうするのよ?」
エリザさんがぼやけば「決まっているだろ」とマックスさんが答える。
「悪魔をぶっ倒してサラマンダーとドラゴンを正気にする」
*
僕らはアドベンチャー山の中を走り回って、悪魔を探した。
山の中は溶岩が流れていて灼熱地獄だ。
熱の防御魔法を掛けていても地面が熱い。溶岩が滲み出ている場所を踏めば火傷を負い、薬草や治癒魔法が必要になる。
出てくる魔物、魔獣、悪魔もイワーク洞窟に出現したものとは異なり、強い。
七匹のゴブリンたちや蛟の主、裁定の神を召喚し、前衛で戦うマックスさんやエリザさん、メリーさんの補佐を行う。
クロウリー先生が攻撃魔法や防御魔法を使うときは僕が治癒魔術や状態異常の解除をする。
そうして火口付近で悪魔を見つけた。
悪魔は神官たちとともに何かを作っていた。
「おい、そこで何をしている?」
マックスさんの問いかけに悪魔は素直に答えた。
「新しい魔王様の玉体を作っている。ノエルの力を借りて金属と水晶の骨を作ってもらったのだ。後は皮を作り、魔王様の御魂を入れれば、魔王様が復活する」
「そんなことさせる訳がないだろ」
「我らを倒すと言うのか。よかろう、相手してやる」
そうして戦闘が始まった。
神官たちは暗殺部隊と同じように攻撃しても倒れない。
「悪魔じゃ、悪魔だけを狙って攻撃するんじゃ!」
「わかったわ」
「了解した」
「ルキウス、七匹のゴブリンを喚べ。神官たちを眠らせろ!」
「はい」
七匹のゴブリンを呼び、イエローが悪魔を痺れさせて足止めを食らわし、グリーンが少しでも悪魔の体力を奪うために毒の術を掛ける。
その間にパープルが神官たちを魅了し、ブルーに眠りの術を掛けてもらう。
神官たちはいびきをかき、眠りに落ちた。
レッドが攻撃力アップ、オレンジが防御力アップの術を僕らに掛け、インディゴに悪魔の動きを封じ込めてもらう。
そうして悪魔に総攻撃をする。
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