110 / 112
第19章 最後の試練5
「それがどうした!? 自分が選ばれた存在だと自慢話をするな!」
「おまえにとっては取るに足らない“ゲーム”の世界の話だ。いちいちそんなものを覚えている必要も、本気で受け取る必用もない。二度とふたたび、この世界へ来ることはないのだから。それがオレからおまえへ与える――最大の罰だ」
そうして空間に穴が開く。縦長の機械的な箱が地面から生えている場所だった。
「いやだあああ!」
断末魔のような悲鳴をあげて偽の神子は姿を消した。
マックスさんがエドワード様のところへ向かった。
全身に傷を負ったエドワード様が、地面に額を擦りつける。
「マクシミリアン様、その折は無礼な態度をとってしまい、誠に申し訳ございませんでした。あなた様の恋人に、とんでもないことを……」
「顔を上げろ。それ以上、言わなくていい。おまえの父親や兄たちが泣くぞ」
そろそろとエドワード様が顔を上げた。
「おまえへの罰はオレが与えるまでもない。おまえはすでに罰を受けているからな」
エドワード様は、マックスさんの言葉に困惑した。
「ルキウスが違う道を選んだことで、おまえはルキウスの愛に気づいた。結果的に偽の神子と悪魔の口車に乗せられず、家族を失わずに済んだ」
「あなたの知っている世界の俺はルキウスを陥れて父上や、兄上たちを手にかけようとしたのですか?」
「……オレは知らない。知っているのはルキウスと『過去』の女神、そして偽の神子だけだ。おまえは救われた。だが『過去』の女神の加護によって二度世界をやり直したルキウスの心の中から、おまえの席は失われた。永遠にな」
エドワード様はその場で、茫然自失状態となってしまった。
「もっと前からルキウスの愛にあぐらをかかずに応えればよかったんだ。どうしたら愛する人を大切にできるか、幸せにできるかを考えるべきだったんだよ。何度もおまえに傷つけられ、苦しめられたルキウスはおまえへ愛を語り、態度で示すことを諦めた。――『愛している』というのは口先ばかり。本当に愛していたのなら、こんな真似ができるはずもない。その苦しみを一生涯背負い、考え続けるんだな」
エドワード様は嗚咽を漏らして啜り泣いた。
ともだちにシェアしよう!