13 / 15

13※

 ぬぷ、ぐちゅ。どこからかそんな濡れた音が聞こえてきた。 「……っ、ふ、ぅ……ッ」  頭がズキズキと痛い。それ以上に、まだふわふわとした意識の中、下半身が溶けるように熱くなるのだ。  夢を見ているのだろうか、それも、よりによってこんなエロい夢を。 「……っ、ん、ぅ……ッ」  力が入らない身体を抱き締められたまま、膝の上に座らせられる。黒い影と向かい合うよう抱きかかえられ、そのままケツの穴に深く突き刺さった性器をゆっくりと出し入れされると、みっちりと詰まっていた肉壁ごと捲られるように引っ張られるのだ。 「は、ッ、く、ぅ……んむ……ッ」  視界が翳り、唇に柔らかい感触が押し当てられる。柔らかく唇を啄まれ、そのままちゅ、とわざとリップ音を立てるように執拗に唇を吸われた。  唇と下腹部から発される濡れた音が部屋の中にまで響き、身体が熱くなる。  ――久古じゃ、ないのに。  朧気な意識の中、胸を揉まれ、呼吸が浅くなった。声を我慢したいのに、少しでも腰を動かされるだけで弱いところに性器が擦れ、「ん、ぅ」と喉の奥から声が溢れてしまう。 「……っ、は、本当に……可愛いよな、近江屋君は」  そして聞こえてきたその声に、先程までふわふわと漂っていた意識が一気に覚醒する。  目の前、俺の唇を軽く舐めた徳永はそう俺の胸を鷲掴むのだ。 「っ、ぉ、まえ……ッ、ん……ッ!」 「なんだ、ようやく気付いたのか? ……まあ、随分と疲れていたようだし無理もないか」  なんだ、どういうことだこれは。  そう俺を抱き抱えたまま、徳永は俺の背中から腰のラインまでゆっくりと指を這わせるのだ。 「っ、や、めろ……ッ、おい……ッ!」 「胸も腰も背中も弱いって、大変そうだよな。本当」 「と、徳永……っ、どういう、つもりだ……ッ」  既に何回か中に出されているのか、軽く徳永に腰を抱えられた瞬間中からぶぴっと音を立てて溜まっていた精液が溢れ出す。それに構わず一気に奥まで突き上げられた瞬間、「んんぅ!」っと声が漏れた。 「っ、は、や、め……ッ」 「どういうつもりだって……どういうことだ? 見たままだけど」 「ッ、う゛……ッ、く、ぅ……ッ!」 「ああ、それとも……そういうの言わせたいタイプ? 馬場みたいだな。『セックス』、……ほら、これでいいか?」 「は、く……ッ、う゛……ッ!」    ばちゅん!と音を立て、持ち上げられた腰を再び一気に根本まで落とされる。脳天貫通したのではないかと思うほどの刺激に耐えれず退けぞれば、そのまま徳永は俺の胸元に唇を押し付けるのだ。そしてべろりと舌を這わせ、人の胸の先端、尖った乳首に舌を這わせる。 「っ、ぁ、や、めろ……っ!」 「本当、馬場のお陰だよな。……君がこんなにエロい子だって知ってたら、遠慮なんてしなかったのに」 「っ、ひ、ぐ……ッ」 「カレシ? いたんだっけ? ……まあ、どっちにしろもうフリーなら次、俺と付き合う? 多分俺たち、相性最高だから」 「は、ぐ……――ッ!」  片方の手で胸を揉まれながら、もう片方の乳首を舌先で転がされる。それだけでもたまらないのに、前立腺を性器で摩擦される度に腰から力が抜けてしまうのだ。  こいつは、本当に徳永なのか。あいつと同じ顔をした赤の他人ではないのか。  そう思いたくなるほどの言葉の数々を浴びせられ、亀頭で最奥をドスドスと突き上げられる。  その度に呻き声が溢れ、堪らず目の前の徳永にしがみつけば、やつは興奮したように息を吐き、更にピストンを早めた。 「っ、ぃ゛ッ! や゛、だ、待ッ、う゛……ッ、ふ、ぅ゛……ッ!!」 「はー……ッ、やっぱ良いわ、なあ近江屋君。俺のになれよ。君、アホで馬鹿で可愛いし、俺すげー可愛がるよ」 「まっ、へ……ッ!」 「待たねえよ」 「ん゛っひ、ぎ……ッ!」  何度も亀頭でノックされ、ゆるくなったその口はとうとう徳永の亀頭に押し負け、ぐぽ、と口を開く。 「待て、そこは」と声をあげようとするのを無視して、そのまま徳永は更に腰を突き動かしてくるのだ。そのままぐぷと空気を押し潰すような音を立てながら、更に奥まで入ってくる亀頭に頭の奥が熱く痺れる。逃げようとする身体を抱き締めたまま、そのままその窄まりに亀頭を引っ掛けるようにして性器を抜き挿しする徳永の口元は笑っていた。 「ひ、ぅ゛ッ! は、……ッ、うぅ゛……ッ!!」 「は、近江屋君きもちい……っ? ここ、亀頭でぐぽぐぽ犯されんのいいだろ?」 「ぁ゛、や゛ッ、ぬ゛げ、ぇ゛……ッ!!」 「なんで? 君だってこんなに喜んでんのに……ッ!」 「ひ、ぅ゛……ッ!!」  強引にこじ開けられ、ねじ込まれ、犯される。  馬場のときとは違う。ねっとりと奥まで、皺の際際まで味わうような腰の動きに耐えきれなかった。拘束らしい拘束もされていない。必死にやめろと目の前の徳永の髪を掴んで引っ張れば、そのまま乳首を噛まれ、「ひうっ」と女みたいな声が出てしまう。 「……っ、は、おかしいな、馬場よりは優しくしてやってんだろ? なんで暴れるんだ?」 「う゛、ゃ゛……ッ! ぁ゛、ぐ……ッ!」 「キス……ああ、キスしようか。ほら、恋人みたいなキス。……近江屋君は甘やかされるの、好きだろ?」 「ちが、う゛、んむ……ッ!!」  抵抗する暇もなく、こちらを覗き込んでくる徳永に唇を塞がれる。躊躇なく咥内に入ってくる徳永の舌に全身が凍りついた。  馬場は、あいつはキスはしなかった。だからこそまだ耐えられたのに、言葉通りねっとりと執拗に舌を絡められ、咥内の唾液を啜るように舐られる。噛まれて、じんじんと痛む乳首を指先で優しく撫でられながら、徳永は俺の喉奥まで舌で犯すのだ。 「っ、ふ、ぅ゛……っ」 「っは、ん、近江屋君……っ」 「う゛、ん゛ん゛……ッ!!」  やめろと突き飛ばしてやりたいのに、舌で上顎をべろりと舐められるだけで力が抜けていきそうになる。舌伝いに唾液を流し込まれ、そのままゆるくなった喉の奥まで直接たらりと飲まされれば、口の中いっぱいに広がる徳永の味に頭がじんじんと痺れだすのだ。  そして抵抗するのを忘れ、呆けていた俺を見て楽しげに笑いながら、徳永は濡れた音を立てて舌を引き抜いた。 「っはー……っ、そのきょとんとした顔、可愛いな」 「……っ、な、んで……ッ」 「言っただろ。気に入ったんだって」 「く、う゛ ……ッ!」  再開されるピストン。下から突き上げられ、下半身を揺さぶられる度に性器が震えた。 「っは、ぁ゛ッ、く、や゛……ッ、ぁ゛……ッ!」 「やーじゃないだろ? っ、ほら、すげー吸い付いてくる……っ! 好きって言えよ、近江屋君……ッ!」 「っ、く、ふ、ぅ゛……~~ッ!」 「あーあーぐずるなよ、かわいいなぁもう……ッ!」  抱き抱えられ、角度を変えて執拗に犯される。ここがどこなのか、何故この男に犯されてるのかも分からないまま徳永に顔中にキスをされ、奥の奥まで形を覚え込ませるみたいに執拗に中を穿られた。  正直、どうにかなってしまいそうだった。  二人分の吐息と濡れた肉が潰れるような音が部屋に響き渡る。徳永の抽挿に耐えきれず、びくんと跳ね上がり、射精しようとする身体を抱き締められたまま更に奥を突き上げられ、声にならない声が漏れた。 「ぉ゛……っ、ひ、ぐ……ッ!」 「……っ、は、俺も、一緒にイこうな」  近江屋君、と俺の耳元で呟いた徳永はそのままピストンを加速された。最早声を上げることも、なにかを考えることもできない。  ただひたすら、徳永を受け入れる肉塊になったような気持ちのまま俺は一方的に犯され、抱き潰され、そして恋人のように優しくされた。  いっそのことこれが夢だったらと何度も思った。  けれど、夢ではない。そうすぐに現実を突きつけられることになるのだ。 「――……なんだ、まだやってたのか? 徳永」  暗い部屋の奥、扉が開いたと思えば現れたそいつを見て、目を見開く。  俺が気を失う直前、管理人室に現れたそいつがそこにはいた。  埃っぽい部屋の中、そのソファーの上。徳永に抱かれている俺を見てさして驚くわけでもなく、その男は「元気だな」と嘲笑するように笑った。  ――死んだはずの高田がそこにいた。  俺たちの向かい側のソファーにどかりと腰を掛け、その足を組み直す。 「……っ、は、(ひがし)……お前も混ざるか?」 「悪くない誘いだけど、俺までお前みたいな下半身馬鹿になったら作戦もめちゃくちゃになっちゃうからね」  ――高田東。やはり、こいつが。  いや、そもそもなんでこいつが、生きて。 「は、ぐ、ぅ……ッ!」 「あーあ、可哀想に。こんなのに気に入られちゃって。けど、そのおかげで君だけは大目に見てやってんだからラッキーでしょ?」 「っ、な゛、に゛ッ、いって」 「あーあ、もうなんて言ってるのかわかんないな~」 「ッ! ひ、ぅ゛!」 「……っ、近江屋君も戸惑ってんだろ、お前が生きてるから……ッ、ね、ほら、可哀想に……っ、びっくりしてる」  ――やはり、生きていたのか。  考えなかったわけではない。けれどそうなると必然的に協力者がいなければ難しくなってくる。  分かっていたからこそ、可能性は低いだろうと除外した。  けれど、その協力者がいた。  徳永という協力者が。

ともだちにシェアしよう!