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「っ、ひ、ぅ゛……ッ!」
ドクンと脈打ち、腹の中、出入りしていた性器が小さく跳ね上がっては射精した。
別の生き物みたいに熱い精子を吐き出すそれにただ俺は呼吸を繰り返すことしかできない。
聞きたいことも、確かめたいことも山ほどあるのに、犯され続けた身体は思った以上に堪えているようだ。
そのままぐぷりと抜かれる性器。引き抜かれる拍子の摩擦にすらびくりと反応しそうになりながらも、俺はそのままソファーに徳永に抱き締められた。栓を失い、どろりと溢れる精液。それを指で掻き出し始める。
「っ、ぁ゛、く、やめろ……っ!」
「駄目だぞ、腹壊すかもしれねえから」
「そうそう。後処理は大事大事ってね。……うーわ、たくさん出たね~」
「近江屋君は身体引き締まってていいんだよな、お前と違って」
「一言余計だっての」
そのまま隣までやってきた高田は、ケツの穴かき回されながら脱力する俺の顔を覗き込むのだ。
「でもまあ、確かに良い体してるよね」
「っ、う、やめ……ッ!」
「あの変態野郎も、君の身体は気に入ってたみたいだしね」
言いながら、ほぼ初対面に等しい相手の胸に指を埋めさせてくる高田にぎょっとする。
俺の記憶の中の高田はこんな性欲に濡れた目をしていない。それどころか禁欲的で、自慰なんて知りませんって面して俺を虫けらかなにかみたいな目で見てきたっていうのに。
本当にこいつが高田なのかもわからない。それでも、限界まで尖った乳首を遠慮なく抓られれば「ひう゛ッ」と声が漏れてしまう。
「う、や、めろ、てめぇ……っ」
「声とろっとろじゃん。こいつの手マンきもちいんだ? それとも、おっぱいが弱いのかな~?」
「っ、ぁ゛、ぐ」
「両方だろ、両方。な、近江屋君」
「っ、ひ、やめ、……っ、ぅ゛……ッ! ぁ、あ゛……ッ!」
細くはない指で前立腺を擦られ、揉まれる。逃げようと上体を逸らせば、今度は高田の細い指が乳首を扱きあげてくるのだ。
逃れられない責苦に虫の息になっていると、そんな俺をじっと覗き込んでいた高田はそのまま唇を舐める。
「……あー、確かに可愛いかも」
「だろ?」
「ぉ゛、まえら、なに゛……ッ、ひ……ッ!」
言い終わるよりも先に、柔らかく乳首の先っぽを撫でられ、胸が大きく跳ね上がった。そのまま高田はカリカリと勃起した俺の乳首を爪先で柔らかく刺激する。
俺が最も弱いところを、絶え間なく。
「っ、ふ、ぅ゛……ッ!!」
「唇噛んで必死に声我慢してんの、健気で可愛いじゃん。ほら、乳首いっぱいシコシコしてあげるねえ」
「っこ、ろす」
「あはっ、やめときなよ。本当に警察のお世話になりたいんならともかくさ」
「っ、ふー……っ、ぅ、く……ッ!」
「お、もう片方も勃起してる。でもいっぱい可愛がってあげた方がやっぱり大きくなってるね。このままじゃバランス悪いから、もう片方もたくさん弄ってあげないと」
「な、に……ッ」
言ってんだ、と口を開いたその瞬間。高田はそのまま口を開けたと思いきや、ぱくりともう片方の胸にしゃぶりつくのだ。
ぬめる咥内。舌先で執拗に乳首を愛撫され、包み込まれるような熱と刺激に耐えきれず俺は高田と徳永に挟まれたまま悶絶する。
咄嗟に口を手で覆い、目を瞑るが、それで快感が軽減するわけではない。無意識のうちに開いた腿を撫でられながら、俺は二人から責められ呆気なく射精した。
「あーあ、いっぱい射精ちゃったねえ。おっぱい気持ちよかったの?」
「っ、ふ……ぅ゛……」
「東、あんま虐めんなよ。泣いてるじゃないか。可哀想に、近江屋君……」
べろ、と頬を舐められ、そのまま目尻に溜まっていた涙を舐め取られる。
悲しくて泣いているわけがない。寧ろ腹立つ。これは生理的なやつだ。そう言い返してやりたかったのに、できない。呼吸が浅くなり、ビクビクと痙攣の収まらない胸をつうっと優しくなぞられただけで肩が大きく跳ね上がった。
「ッ、は……ッ、ぉ、まえら、なんなんだよ、なんで……こんなこと……ッ!」
高田が生存している。
そうなると、全てが狂ってくる。元々久古は高田を襲った暴漢に襲われた――そう俺は思っていた。けれど、その高田が無事で暴漢も存在しないとしたら。
そう言いかけたとき、二人はきょとんとして顔を見合わせる。そして、そのまま俺を覗き込むのだ。
「なんでって……まあ、君には悪いことしたと思ってるよ。あんなやつに酷い目に合わされたんだし。けど、これは俺たちの問題だからな」
「ふっ、ざけんな……こんなこと……ッ、じゃあ、久古は……」
「――久古? ああ、君のカレシのことか」
もしかして生きてるのか。
高田が生きているというのなら、あの久古の死体も実は作り物で、どこか俺の見えないところで生きてるのではないか。そんな思いで目の前の男を見上げたときだった。
「あいつはまあ、死んだね」
「東」
「別に良いだろ、連れて行くってなら共犯になった方がさ」
「…………待てよ、どういう意味だよ、それ……」
無意識の内に声が震えた。
高田は俺の顎を掴んだまま、そのまま顔を寄せるのだ。唇同士が触れ合いそうな至近距離、目の前の男は笑ったのだ。
「あいつはカノジョ想いの真面目なやつだったね。だって、俺の誘いにも乗らなかったんだもん」
「――……は?」
「けど、優しかったよ。初対面だってのに俺の死んだフリ手伝ってくれたし、夜中に部屋に押しかけても手伝ってくれたもん」
「部屋……に、って」
キン、と頭の中に耳鳴りが響く。全身の熱が引いていくような感覚に襲われた。
この男の言葉を理解したくなかった。
「……けど、惜しかったなあ。優しかったけど、融通利かなすぎ。――だから、口封じしなきゃならなくなったんだし」
高田は肩を竦め、笑った。
「東」と咎めるような声を投げかける徳永に、「けど、お前だって『彼氏持ちは嫌だ』って言ってただろ?徳永」と高田は笑った。
「でも安心しなよ、彼の分まで俺たちで君のこと可愛がってあげるよ」
「っ……ふ、ざけんな……」
「ん?」
考えるよりも先に、身体が動いていた。
拳を握り締め、目の前の高田に殴りかかろうとしたが、それよりも先に背後の徳永に「おっと」と身体を羽交い締めにされた。
「っ、触んな! 離せ!」
「全く、可愛げがあるときはチンポ突っ込まれてるときだけか? ……徳永。薬、打っておきなよ」
「そうだな。……きっとその方が近江屋君も楽だろう」
「ふざけんな、人殺し……っ、お前が、久古を……ッ!!」
終わるよりも先に、そのまま首に回された徳永の手に首筋を晒される。そこに突き立てられそうになる注射器の先端に目眩を覚えた。
これを打たれたら終わりだ――それだけは分かっていた。だからこそ必死に抵抗しようとしたそのときだった。
薄暗い部屋の中に、いきなり凄まじい音が聞こえてきた。それが足音だと一瞬わからなかった。そして、何事かと物音のする方へと目を向けた高田と徳永。それも束の間、とうとう扉を蹴破ってきたその男は、二人に羽交い締めにされている俺を見て、小さく息を吐いた。
「……っ、げ、馬場……」
現れた馬場に、二人の顔色が露骨に変わる。
「……こんなところにいたのか、二人とも」
「馬場、これは……」
そう徳永がなにかを言いかけた矢先だった。壁に立てかかっていたモップを手にした馬場に、二人は慌てて立ち上がる。
「言い訳は必要ない。――全部、聞いていた」
「念の為、こいつに仕込んでいたGPS搭載型の盗聴器でな」そう静かに続ける馬場。普段の荒れ狂った馬場とは違う、悟りすらも感じさせるほどの冷静な声だった。
「っ、こいつ、まじでキッ……」
「おい東、逃げるぞ!」
「え、でも近江屋君……」
「いいから!」
それも束の間、問答無用で殴り掛かる馬場から逃げるようにそのまま奥の扉に向かって行く二人。ソファーの上、一人取り残された俺のもとに馬場は駆け寄ってきた。
「……っ、おい、大丈夫か!」
「お前、あいつら、追いかけろ……」
「あいつらのことはいい、気にするな。……それより、今はお前の体だ」
「よくねえよ……っ! あいつは、高田は、久古を……ッ」
「ああ、聞いた」
なら、どうして。
当たり前のように盗聴器を仕込んでいたことはこの際不問にするが、それでも馬場の行動が不可解で、じれったくて、俺は馬場の胸を殴った。拳の方が痛む始末だ。
「……今、お前を一人にできるかよ」
……なに言ってんだ?こいつ。
あまりにも突拍子のない馬場の言葉に思わず耳を疑った。そんな俺に構わず、馬場は俺を抱き締めた。
「外も吹雪も落ち着いて、救急隊がこちらに向かってくるそうだ。……あいつらは、山降りてる途中に見つかって捕まるだろ」
「……っ、でも……」
「お前、馬鹿かよ。それより、自分の身体のこと気にしろよ」
「うるせえ! 大半はテメェのせいだろうが!」
「ああそうだよ! だから心配してんだろ!」
なんでこいつ逆ギレしてんだよまじで……?!
ふざけんな、と言い返す代わりにもう一発馬場の胸を殴れば、そのまま手首を掴まれた。
そして、
「う゛ッ」
首にやつの手刀が叩き込まれるのを最後に、俺の意識は再び途切れるのだった。
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