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第22話 これってやっぱキスマークですよね!?

 翌朝、すっきり爽やかに目覚めて、いつも通り七時過ぎには智洋と一緒に食堂で朝飯を済ませた。その時たまたま金髪王子と会い、テーブルは違ったものの帰り際に声を掛けられて驚いた。 「カズくん、こないだの三年生だけの演舞ビデオに撮ってあるんだけど観る? 練習で使うならコピーを貸し出すよ?」  爽やかな笑顔で言われて、それはもう飛び上がらんばかりに舞い上がってしまった。 「え、演舞のビデオ! 観ますっ、是非貸してくださいーっ!」  マスターは生徒会室に保管してあるけれど、コピーなら自室にもあるらしく、寮の娯楽室か学校の視聴覚教室でデッキを借りれば観られるという。  俺はこの後着替えてコートに出ると言う智洋と別れて、そのまま金髪王子について二階に上がって行った。 「そういえば今日は浩司先輩は一緒じゃあないんですね」  いつも食事は一緒にとっているのにと思って何気なしに尋ねると、 「ああ、浩司は大抵日曜は遅くまで寝てるよ」  と、軽く返される。  んー? 今日が最初の日曜日だけど、元々付き合いがあるからそういうのも良く知っているのかな。 「多分起きないとは思うけど、一応静かにね」  とある部屋の前で足を止めた王子を見上げ、そのままプレートを見るとなんと先輩の名前が!  えっ、ど、同室……っ。浩司先輩の寝顔……うそっ、マジで!?  カチャリとドアを開けてするりと入って行く金髪王子について、中に入ってからそっとドアを閉める。  ドア口でそのまま受け取るべきかとも思ったけど、やっぱり多少図々しくても寝顔拝見! してえ!  向かって右側のベッドに、まごう事なき浩司先輩の姿が……しかも上半身裸なんですがっ。春先なのに布団下半身しか掛けてなくて寒くないんでしょうかっ!  運の良いことに通路側を向いて横向きに寝ているのでなんと言うか色々見えてます……。  胸筋、腹筋、上腕筋、全部引き締まってて綺麗……鎖骨、色っぽい……ん? あれ? 何だか鬱血痕みたいな。いっぱいある??  え、ええっ!?  虫刺されじゃあないよね。流石に俺でもそれは見間違えないしっ。 「あれー? カズくん真っ赤っ赤」  見惚れつつもうろたえている俺のところに、金髪王子が戻って来た。 「え? いやその、ちょっとっ。いえなんでもないですっ」  控え目に弁明しつつも、差し出されたビデオテープを両手で受け取ると、金髪王子はちらりと浩司先輩を見遣って笑みを湛えた。 「夜遅かったから、疲れてるんじゃない?」 「はひっ、そ、そうですねっ」  返答する声が裏返ってしまった。  遅かったって、何処でっ何をっ!  いくら奥手でも一応そういう知識は持っているから、脳内では顔が不明の女の人と浩司先輩があんなことやこんなことをしている妄想が止まらなくて、ますます狼狽してしまう。 「ああああの、これっ、有り難くお借りしますーっ!」  テープを胸に抱き締めるようにして、慌ててドアを開けぺこりとお辞儀してから退出した。  ひえーひえーひえーっ!  あれだけかっこいいんだから当然彼女とかいるんだろうけどっ。チーム入ってたくらいだからバイク乗れば街まですぐなのかもしれないけどっ。  週末とかってやっぱりそういうこと、するもんなんだ……。  どんな人なのかな、やっぱり大人っぽくて、美人なんだろうな。あれだけ痕残すなんて、知識しかないけど、独占欲強い人なんだろうな……。  ちょっともやっとしたけど、流石先輩だなあと思いはしても、その女の人に取って代わりたいとかは思わなかった。

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