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第39話 携となら怖くない
「和明との久し振りのスキンシップだし、誰にも邪魔されたくないからな」
唇を行ったり来たり、時には軽く押してみたりされて、閉じていられなくて薄く開いてしまう。
そこに差し込まれた整った指先を舌で突付いてみたり。ほんのり温かくなっている指の腹を舌で辿る。
味とかは、別にないんだけど……ふ、と時折息を詰める携の表情が好きなんだ。
「いい?」
再び問われて、俺は頷いてからゆっくり体を起こすと、自分で内鍵を回した。
振り返ると、ベッドに腰掛けたまま見上げている携と視線が絡まった。
改めて見るまでもなく、携は綺麗でかっこいい。智洋のこともかっこいいと思うけど、全然タイプが違うし、智洋は綺麗っていう形容詞には向いていない。三人で一緒に居る時はまさに俺『両手に花』状態なんだけどな。
憂いを含んだ眼差しが、森の中の湖みたいだ。反対に、智洋は輝く太陽みたいな、そんなキラキラとした存在感。
あ、そうか……月と太陽。そんな感じかも。
そういえば、いつも俺と入れ替わりに大浴場に向かう智洋だけど、もしかして今日も俺が部屋に帰るの待ってるのかな? 直接ここに来ちゃったから、もしも待ってたらどうしよう。
「和明?」
ぼーっと立ったままの俺を不思議そうに見て、携も立ち上がった。そのまま正面から抱き寄せられて、その肩に頭を預けた。
「──谷本にどんな風な格好で弄られたのか、教えてよ」
それは突然耳元で囁かれて。え、と返答に窮している間にもう一度耳の中に声を落とされる。
「教えて?」
え? あれ、俺周の名前なんて出してないのに……?
少し体を離して、俺の目を覗き込むようにされた。
駄目だ、瞳に吸い込まれそう……。精神抵抗ゼロですごめんなさい……。
「後ろから、膝の上に座らされて……」
ああ、と瞬きして腕を解くと、もう一度ベッドに腰掛けて誘うように腕を広げられた。そのままふらりと寄って、あの時みたいに腿の上に腰を落とす。──別にこれ自体が嫌なわけじゃないんだよな、なんて再確認しながら。
「それから、こう?」
背後から回された手が、Tシャツの裾から中に入りゆっくりと肌を撫でていく。
「そ、そう」
場所によってぴくんと跳ねる体を確認するかのように、丹念にあちこち触れ、そしてたまに軽く押す。それもいつものマッサージみたいで気持ち良くて、でもいつもより息が上がる。
ついに指の腹が突起に辿り着いた時、ぴりりと背筋に軽く電流が走った。
「っぁ、」
息を荒げる俺には当然気付いている筈の携だけど、手を止めようとはしない。
「その時もこんな風に反応したんだ?」
「ぅ、だって、勝手に……体、がっ」
「ふうん、それじゃあ誰でもいいってことになっちゃうよ?」
「ちがっ」
首筋に唇の感触、そこから伸びた舌先が舐め上げていくと、熱い吐息が漏れた。
あの時より、ずっと気持ちいい。それはきっとテクニックとかそういうんじゃなくて……俺が、携に心を許しているからだと思う。
周の時より時間を掛けてじっくりと……まるで点検されているみたいに反応を確かめられて、自分でも半勃ちなんてもんじゃ済まなくなっているのが判った。
それにしても、周にされたこと再現するなんて、どんな意味があるんだろう?
疑問には感じても、それが不安へと繋がらないのは、相手が携だからだ。だから逆に困ったことに、股間のものはこのまま治まりそうにない。どうしよ……。
ハーフパンツと下着の下に、右手が滑り込んでいく。あの時は、まだ平常時そのものだった場所は、今は既にかなりのやる気を見せていて居た堪れない。
滑るように指先が先端へと向かい、円を描くように撫でられて雫が零れた。それを更に刷り込み撫で付けながら首から上だけを愛撫される。ひく、と喉が鳴った。
「気持ちいい? それからどうしたんだ?」
静かに尋ねられて、竿を扱かれる。もうどうしようもなく昂ぶっている体の始末をどうつければいいのか分からなくて、必死で首を振った。
「どうも、ないっ……恐くて、萎えて……終わりッ」
ふっと背後で微笑んだのが判った。左手で服をずらされて、股間が露わにされる。
「俺がするなら……恐くないんだな」
「あ、たり前だ、ろ」
ぶっちゃけ、いくら携相手とはいえ、こんな風に恥ずかしいことをしたのは初めてだった。それこそトイレや風呂で目に入る、なんていう日常の行動では有り得ない。いくら他のヤツよりスキンシップしてきたとはいえ、こんなことまでしたことはないし、されたこともない。
それでも──そこにあるのは、圧倒的な安心感。
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