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第46話 意識しまくりです
バーガーショップを出た後、歩いている途中で映画館を見つけた。丁度もうすぐ入れ替えの時間で、俺たちの好みに合うバイオレンス・アクションをやっている。主演は日本の大物アクションスター、周りは外国の演技派が揃っている。チケットを買ってみたいという周に任せて、俺は看板なんかを眺めていた。
「行こ」
手を引かれて我に返るも、そのままもぎりのおばさんの横を通りロビーへと抜けてしまった。
「あ、周俺の分払うっ」
「じゃあ代わりにポップコーン買って来て?」
一番大きいやつにしてもチケット代には到底満たないのでジュースも買って、トレーに二人分載せて空いている席を探した。
休日だから悪くしたら立ち見かなあなんて思ってたけど、封切りしてから少し日数が経っているのもあり、最後尾の右端が空いていた。デートならもっとロマンチックなのを選ぶんだろうか、殆どが男性客ばかりだ。
俺が奥に詰めて間の肘掛にトレーを置いてから、ジュースだけ右の専用ポケットに入れ直す。
やがて場内の照明が落ちて予告編が始まり、それも終わると更に照明が落ちてスクリーン部分が大きくなった。
主人公の暗殺者が任務遂行に失敗し、警察に捕まってしまう。そこからは、脱獄、裏切り者への復讐、とハラハラドキドキの展開が続いていく。視点が主人公だったり警察側だったりと、息もつけずに俺は見入っていた。
時々思い出したようにポップコーンを摘まんでいた手が、同じように摘まんでいた周の指先とぶつかった。
ごめんと言いかけて、それを制するように指を絡め取られ、こっちに寄りかかるように体を傾けた周の口に、指先が吸い込まれるように消えた。
銃撃戦の中で、俺のあげた小さな声はかき消された。
柔らかで温かいものが、ねっとりと指先を這い唇から出てきて指の股まで丹念に舐め上げられる。
「っん、」
ぞくぞくと背中を伝い腰まで下りていく快感に、自分でも驚く。
なんで指舐められただけでこんなになっちゃうんだよ……。
諌めようかと息を吸ったとき、すっと身を引いて手を膝に下ろされてしまった。タイミングを逸して、仕方なく俺はまた視線をスクリーンに戻す。
でもその後はなかなかストーリーに入り込めなかった。
さっきの感触を思い出したり、たまにそっと足をくっつけられたり、太腿を撫でられたりしてはそっちに意識が行ってしまう。
事件の真相も頭に残っていないくらい気もそぞろだった。
エンドロールでバタバタと席を立つ人たちの中、ふうと息をつきながら肘で周をつついた。
「酷いよ、周……あんなのされたら気になって映画観れないじゃん」
「そう? 普通によくあることだろ? あれくらい」
よくあるかなあー? 少なくとも指は舐めないだろう……けど俺がしたことないだけで皆してんのか?
半信半疑ながらも口を噤むと、
「いいよ? もっと俺のこと意識して?」
なんて流し目されて、もう返す言葉が見つからない。
明かりがついて、空になった紙カップやらを手に、周が立ち上がる。飲みかけのジュースを持って俺が立つのを待っていたかのようにゆっくり歩を進める後姿を追いながら、女の子相手でもデート成功すると思うけど、なんで俺なんだろうなあなんて思ってしまった。
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