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第48話 アトリエ

翌日は、ジョルジファンのマリサちゃんのために、みんなでアトリエに行くことになっていた。 マリサちゃんはレナちゃんと来るので、レナちゃんに狙われている柏木先輩も呼ばれた。 ホント、レナちゃんには無駄な時間を取らせるが、仕方ない。 横からあれこれ言うもんじゃないし。 ハルマは葵さんが迎えに来て、先に行った。 俺のことは、和紗が迎えに来てくれる。 後部座席は、マリサちゃん、レナちゃん、先輩の順で乗る。 数少ない、女子と先輩の密着場面だ。 頑張れレナちゃん。 道案内をして、アトリエに近づく。 先輩は機嫌がいい。 確実に昨日、響さんとラブラブしたんだろう。 良かった。 和紗は今のところ普通だが、いつドMになってねだってくるかわからない。 葵さんのバイトが受かったら、早く居酒屋をやめて和紗と距離を置こう……。 ♢♢♢ アトリエに着いた。 葵さんが出迎えてくれて、中に入る。 いつものソファに腰掛け、ジョルジが挨拶する。 「やあ!みんな!来てくれてありがとう!こんな若い子たちに興味を持ってもらえるなんて嬉しいよ!」 そう言って、ジョルジは和紗を抱きしめ頬を合わせた。 あれ?キスはしないんだ。 他の人もそうだった。 女の子がいたからやめたのかもしれない。 早速、マリサちゃんは、お母さんが好きな絵の話をし、個展に行ったときの写真を見せていた。 レナちゃんと、和紗もそれを見ている。 すると、葵さんが声をかけて来た。 「リョウスケ君、今面接をしてもいいかな?」 「あ、はい!よろしくお願いします!」 「あと、そちらの柏木さんも……もし良かったら、ちょっとモデルやってみませんか?」 「え?僕ですか?」 先輩は驚いていた。 うん、スカウトする気持ちはわかるよ。 葵さんに連れられ、別の部屋に入る。 化粧をしたハルマがいた。 「ハルマ……綺麗だね……。」 先輩は見とれている。 「面接って言っても、何か特別なことするわけじゃないから。僕の名前は上杉葵。ジョルジの恋人で、メイクとカメラマン係なんだ。よろしくね。」 「よろしくお願いします。」 俺と先輩はそれぞれ自己紹介した。 「リョウスケ君、面接としてはね、機材運びやデータの調整とかなら教えたらできると思うんだ。だからそういう作業ができるかより、ハルマの表情を引き出せるかのところで協力してほしいなって思うんだ。」 「な、なるほど……。」 エッチな顔しか……出せませんけど……。 「ちょっと、今やってみて。いい顔出たら撮ってみるから。」 お、おう。 俺は、ハルマの横に座った。 改めてハルマを見る。 先輩の言う通り、綺麗だし、可愛い。 ハルマもちょっと緊張してるようだった。 まずはハルマと恋人つなぎをする。 そして引き寄せて、頭をなでた。 おでこにキスをすると、ハルマはちょっとほほえんだ。 普通なら……ここでキスしちゃうんだけど……いいのかな……。 ハルマのほんのり色づいた唇を見つめる。 唇を近づけた時だった。 「いいね!さすがホントの恋人!ハルマ!今の感じ忘れないで!」 「は、はい……。」 「じゃあ、今のリョウスケ君のポジションに、湊君入ってくれない?」 「え?僕ですか?」 「悪いけど、上をこのシャツに着替えてもらって。ボタンは締めなくていいから。」 先輩は言われた通り着替え、俺の座った位置について、手を絡ませ、ハルマを引き寄せて頭を撫でた。 見つめ合い、唇が近づく。 絵的には最高だ。 ハルマにはちょっと緊張が走ってるけど、先輩の男らしい美しさと、ハルマのかわいさの両方が揃って、絵画のようだ。 「ああ、いいね。これはこれで。」 葵さんが写真を撮る。 「お疲れ様!湊君もなかなかやるね!もう今日からバイト代出さなきゃダメかと思ったよ。」 葵さんはご満悦だ。 「僕は今から日本で仕事するんだけど、ハルマのような若い男の子の美を中心に芸術活動をしたいんだ。湊君も興味があったらモデルのバイトしない?それでリョウスケ君が裏方と二人のマネージャーやってくれたら楽しくやれるかなって思ったんだけど。どうかな?」 俺はいい話だな、と思った。 正直、あまり仕事が無さすぎて給料が低いのは困る。 先輩が加わってくれたら、俺の出番も増えるだろう。 先輩をチラリと見る。 「僕は……あまりこういう業界はわからないんですけど、それでよければ……。」 あれ? なんかいつもと違う優等生な先輩だ。 そうか、相手が葵さんだから……。 高校生のときの委員長キャラで葵さんと絡む先輩もいいな。 「リョウスケは……いいの?」 ハルマに言われて、危うく妄想に飛びそうなところを引き止められた。 「あ、はい!俺もそれでやらせてください!」 二つ返事でオッケーした。

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