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第1話 プロポーズみたいな勧誘をしてくるマッチョ
“めっちゃ細いですね“
細身の鏡也にとって挨拶かと思うくらい昔から聞いてきた言葉だ。
「はあ、普通初対面の相手に言うかな」
「細いこともコンプレックスになるだろ。デリカシー身に付けてこいよな」
元々筋肉がつきづらい体質だというにも関わらず食が細いことも太れない原因だというのは自覚している。
ここ最近では職場の同僚にさえ女装したら似合いそうやら何やらと、とにかくネタにされがちでパーソナルジムにでも通って食事から全てアドバイスしてもらうべきか、とにかく吐くほど食べ続けるべきか…と頭を抱えている。
仕事の帰り道に誰かの大きな声が聞こる。振り返ってみると、ものすごい笑顔のマッチョが目の前で何か言っている。
「(おお、めちゃくちゃかっこいい体格してんな、この人。何言ってるかわからないけど。)」
イヤホンを外してみる。
『筋トレ!!興味ないですか!!!!??』
「(声がでかい…誰に話しかけてんのこの人。俺で合ってる?)」
『お兄さん!筋トレしてみませんかっ!』
『パーソナルトレーニングジムなんですけど、今なら特典いっぱいあります!』
「はあ…例えばどんな…?」
丁度、ジムに入会するかどうか悩んでいたタイミングだったこともあって、つい反応してしまった。
「(今入ると安くなるとかプロテイン飲み放題とかかな)」
ガシッ
「(急に手掴まれたけど何!)」
『僕がこれからずっと…あなたを傍で支えます!!』
「???????」
『ご飯もだし、身体のメンテナンスも任せてください!』
「ん?はい?(プロポーズでもしてんのか、この人)」
『す、すみません。ちょっと言い間違えました。』
『えっと…僕が食事からトレーニングまで目標達成に向けてしっかりサポートします!』
「ふふっ。勢い余ってちょっとどころじゃない言い間違えしてる」
不覚にも吹きだして笑ってしまう鏡也。
カタン…鏡也のスマホが落ちる
落ちたスマホを拾う叶。拾ったスマホの画面には“パーソナルジム““肉体改造“の検索結果が表示されている。
「あぁぁ…(やってしまった。このタイミングでジム探してたのバレた…)」
『すみません。お兄さん…トレーナーは僕じゃダメでしょうか?(しゅん…)』
「う…ダメではないです…けど…(何このワンコ感。断りづらすぎる…)」
『やった!!!じゃ、これから末長くよろしくお願いしますね!!!!!』
「いや、だから何でそんな言い方になる!!」
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