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前編

『お前の秘密を知ってるぞ』  手紙と一緒に入ってたのは、一台のスマートフォン。『電源を入れて動画データを見ろ』という手紙の指示に従った。  震える指で操作したら、そこには便座から盗撮したような映像が入ってた。用を足してる局部はもちろん、顔もバッチリ映ってしまってる。間違いなく、職場のトイレだ。  思わず口を覆った。生まれてからずっとひた隠しにしてた秘密が、そこには赤裸々に映ってた。  僕は…カントボーイだ。手術でそうしたわけじゃない、生まれつきだ。  僕がもし中小企業のしがない社員だったら、大した問題にはならないだろう。でも、野心家のエリートが揃ってるわが社では、常に競争がある。周りは全部敵だと思っておかなければ、すぐに出世街道から外れてしまう。  僕がカントボーイだという事実は、同僚たちが僕の足を引っ張るための、格好の攻撃材料になるはずだ。ゲイやトランス疑惑程度ならまだいい。ちんこ好きのセックス狂い、去勢趣味、最悪の場合は…病気持ちだなんてレッテルまで、貼られかねない。  最悪だ。これはまぎれもない脅迫だ。  誰がこんなことをしたんだろう?僕が小便器で用を足さないのを不審に思った、同僚だろうか?僕の昇進を快く思っていない上司?それとも僕に無茶振りされた部下か?心当たりなんていくらでもある。  僕らはみんな、生まれつきのエリートだ。嫌われることなんて慣れてるから、他人を蹴落とすのも躊躇しない。 「…終わった……」  机に突っ伏したら、思わず声が漏れた。  せっかく苦労して、今の地位に就いたというのに…今じゃもう、このキャリアも危ないものになってる。なんとか犯人を突き止めて交渉しないと、このままじゃ最悪はクビだ。  すると突然、例のスマホが鳴った。慌てて確認すると、インストールされてたチャットアプリにメッセージが届いてる。  ふてぶてしくも、差出人のニックネームは<ご主人様>と書いてあった。 『顔付きの全裸写真を送れ 5分以内』 「……ッ…」  息を呑む。さらに脅迫材料を手に入れようとしてるんだ。そう思うと背筋が凍った。同時に怒りで唇が震える。 『君は誰だ?何が目的だ?』  なるべく相手を刺激しないような言い方で、メッセージを打ち込んでみる。冗談じゃない、裸の写真なんて…これ以上、相手の有利になる前になんとかしないと。 『無駄な質問一回 減点20』  他のアプリの通知が出てくる。開いてみたら、<残り80点>と書いてあった。  その上にはやや小さい文字で<破滅までのカウントダウン>。0点になったら破滅?つまり…動画を晒すってことか? 「なんだ…これ……」  さらに最下部にあった文章に、瞠目してしまう。 <ご主人様の機嫌を損ねると減点されます。逆に、ご機嫌を取れたら加点されることも。100点になったらご主人様が会いに来てくれますよ!がんばって!>  今が80点。減点が20点だった。つまり最初は、100点から始まるんだ。余計な質問をしなければ、すぐに犯人が現れたのかもしれなかった…っていうのか? 「…っ……!」  畳み掛けるように、チャットアプリへメッセージが届く。 『残り3分で破滅』  思わず椅子を蹴倒して立ち上がった。怒ってたことも手伝っただろう。このマンションに引っ越してから最初に買った自慢の椅子だけど、今は気にしてる場合じゃない。椅子が床にぶつかった衝撃音も耳に入ってこなかった。  バスルームに行って、スマホを握りしめ、しばらく右往左往した。  どうしたらいい。いや、選択肢なんかもうない。今すぐ脱いで、写真を送らないと。でもそんなことをしたら泥沼だ。破滅が先送りされるだけだ。何か方法はないのか。ああクソ、残り時間が迫ってくる。落ち着け。時間がない。落ち着け僕。何か方法は……畜生、チクショウ!  ない!そんなものはない!! 「ちくしょう…!」  スマホの通知に『残り1分』とチャットが出た。  反射的に、着ていた服を脱ぎ捨てた。鏡を睨みつけ、写真を撮る。<ご主人様>に言われた通りの、全裸で顔付きの写真を。 「……満足か?」  送信ボタンを震える手でタップした。負け惜しみの呟きだけがバスルームに虚しく響いた。  送った直後、社用弁護士に相談するべきだった…と、激しく後悔する。でももう…遅いんだ。どっちにしろ残りが5分じゃ、その暇もなかった。  何分くらいだろうか、僕はスマホを握りしめたまま洗面所に突っ伏していた。そしたら、持っていたそれが再び鳴った。藁にもすがる思いでメッセージを開く。 『つまらない画像 減点10』 「…なんでだ!従ったじゃないか……ッ!」  僕はもう、半分以上は泣いてたと思う。点数表示のアプリは残り70点にしっかり訂正されてた。 『チャンスをください』  拳を握りしめて、洗面所の大理石にみしみしと押し付けながら、そう返事をした。そしたら一分もしない内に返信がきた。 『全裸でおまんこおっぴろげ 笑顔つき』  最低の言葉の羅列に、顎を引いた。  相手は完全に僕を小馬鹿にしている。だが、ここで刺激してしまうのも得策じゃない。なんとか点数を稼いで、やつが会いに来た暁には…目にものを見せてやる。  あとたった30点だ。たった30点、あいつの機嫌を取ればいい。それでこのみじめな気分とも、さよならできる。覚えてろ。  真っ赤になってた顔をさっと洗って、頭を冷やす。鏡を睨みつけ、ほっぺたを叩いて、無理やり笑顔を作った。 「セックスアピール…して欲しいんだろ?」  なるべく不敵に言ったつもりだ。でも、やっぱり声は少し震えてたと思う。  洗面台に乗っかり、大陰唇を引っ張って、中が見えるようにする。立てた方の膝に頭を乗せて、鏡に向かって精一杯笑った。さらに中指をまんこに入れて、笑顔のままで舌を出す。 「どうだ、興奮するだろ…?求められた以上の写真だぞ。それでマスでもかいてろ」  毒づきながら写真を送信した。AVのパッケージみたいな写真だった。自然と流れてきた涙を、急いで手で拭った。 『合格 加点20』  そんな返事が来たので、思わずガッツポーズが出てしまう。  ほら、やっぱり簡単だ。手玉に取ってこっちのペースに引き込むだけ。あと10点で、僕は自由になれる。 「そうだ、自由は目前だ。がんばれ、僕」  僕は必死で、鏡の前の自分を鼓舞した。  これが、地獄の日々の幕開けとも知らずに…。  一夜明けて、入社以来、一番最悪の気分で出社した。  早めに来てトイレをくまなくチェックしたが、盗撮器みたいなものは見つけられなかった。もう回収してしまったんだろう。  これでは犯人の証拠もおさえられない。唯一の手がかりになると思ったのに当てが外れて、落胆を隠せなかった。  肌身離さず持ち歩け、と言われていた携帯を取り出す。チャットは前述の命令を最後に、まだ新着通知は来ていない。こちらからアクションを起こすべきか悩んだが、やめておいた。  余計なことを言って、また減点されるのが怖かった。残り90点もあるんだから、今はゆっくり作戦を練るべきだ。  ランチタイムに携帯を確認すると、新着通知があった。 『職場で全裸オナニー。30秒以上1分以内の動画』  持っていたサンドウィッチを落としそうになった。同僚に気づかれないよう、平静を装って立ち上がる。  考えろ、考えろ。あいつの機嫌を取れて、なおかつリスクの少ないやり方を。  送るタイミングは、早すぎても、遅すぎても、きっとだめだ。局部と顔が映ってたら、あいつは多分喜ぶだろう。明るめで、人が来ない会議室。少し声も出せたらいい。イく所を撮るのが一番だ。  やつは僕が「無理だ」とごねるのを期待してる。ごねて減点を重ねさせて、追い詰めたいんだろう。脅迫して遊んで、飽きたら金を引っ張れるだけ引っ張る?上手いやり方だ。  私怨なら、シメに破滅させたら完了だろう。そうはさせるか。  日当たりはあまりよくないが、今日は予定が入っていない会議室を見つけた。大きなテーブルの影に隠れて、手早く脱ごうとする。でも、下着だけはなかなか下ろせなかった。小さな物音にも敏感になってしまい、足音が聞こえるたびにびくびくと縮こまった。 (怖い、こわい、こわい…っ)  とにかく、動画だけ撮ればいいんだ。それも1分以内だ。その時だけ、下着を下ろせばいい。そう思って、下着の中に手を入れた。  緊張のせいか、なかなか集中できない。クリトリスを転がして、いつもオナニーする時より、強めにつまんだりしてみる。 「…ふ、ぅ……っ♡」  僕は何をしてるんだろう。自分がキャリアを重ねた大事な職場で、服を脱いで、オナニーして。イくところを自撮りしようなんて。こんなところが見つかったら…それこそ…。 (だめだ、余計なことを考えるな)  今は耐えろ、僕。残りはたったの10点だ。やつの機嫌を取って、反撃のチャンスを伺うんだ。だから今だけは、頭を空っぽにして、イくことだけを考えよう。  唇を噛んで、どうにか勃起してきたクリを指先で弾く。気持ちいい、気持ちいい。気持ちいい…。自己暗示みたいに言い聞かせて、クリをこね回す。 「っ…ぅ♡……ん…♡」  指を噛んで声を押し殺してたら、いつの間にか指に舌が絡んでく。 「んむ♡ちゅ…っう、ぅ……ん♡」  クリをいじってる方の指に涎を絡ませて、マンコ全体に塗りつけた。ぬるぬるが気持ちいい。体育座りのままで体を丸めて、気持ちいいところに意識を集中する。 「ぅあんっ…!?♡」  指を入れると、思わず声が漏れた。中は思ってた以上にトロトロで、すんなり奥まで入る。 (感じてる…♡このままイきたい♡イかないと…♡)  これは僕のせいじゃない、あいつの命令だから、イかなくちゃいけないんだ。だから、僕は悪くない。 「ふっ…ぅ…♡っんん♡」  中指で奥の方を押して、親指でクリをこねる。ちゅぷちゅぷといやらしい音が聞こえてくる。  もうイきたい。いつの間にか半開きになってた口からよだれが垂れて、くっつけてた膝の上に落ちてく。  下着の中はもうびちょびちょだ。指を増やして中の気持ちいい所をいじる。ぬるぬるが出てくるのが止まらない。ぐちゃぐちゃにかき回すと、意識が遠くにいってしまいそうになる。 「っい……イくぅ…も、…だめ♡」  薄目を開けて、下着を下ろした。急いで股の下にスマホを置いて、撮影を開始する。僕のぬるぬるになったおまんこ、よだれを垂らしてる顔、全部映ってる。 「ぅくっ…ふ、うぅ♡」  歯を食いしばって指を入れた。もう片方の手でクリをこねて、イくために激しく動かす。 「う゛っ、ぐっ…♡い゛っ♡いくぅ…♡みて、見てぇ…っ♡イくから、みてっ……んっ、うぅ゛~~~~ッッ♡」  びくっ、ビクッ…と、体が大きく痙攣した。  腰をガクガクさせながら、僕はカメラの前で盛大にイった。床には少しだけ、僕のよだれとマン汁が垂れていた。ぼーっとそれを眺めて、撮影終了ボタンを押す。  ハンカチで股と床を拭いて、時間を確認する。もう休憩からみんなが戻ってくる頃だった。慌てて、動画をよく確認もせずに送った。  誰にも気づかれないことを祈りながら、僕は自分のデスクへ戻った。  終業後にスマホを確認したら、返事が届いていた。 『照明やや暗め、マン毛は全部剃れ。イくシーン、声出しの努力は認める。減点20の加点20で、プラマイゼロ』  椅子から崩れ落ちそうになった。失望と安堵が一緒に襲ってきた。  あれが最低限だっただと。照明を入れるのは不可能だ。どれだけ無理をしたと思ってる。でももし陰毛を処理してたら、100点に届いてた。陰毛さえ処理してたら。 「…………」  メッセージを睨みつけてると、徐々に頭が冷えていく。マイナスじゃなかっただけ、マシだと思うべきだろう。もしイけなかったら、声を出せなかったら、減点されてたんだ。  怖い。無理をし続けなければ、破滅する。  全ての要望を上回らなければ、会いにも来てくれない。このまま一生、あいつの命令を聞いてなきゃいけなくなる。どうしたらいい。  デスクに置いてある、自分が初めて社内で表彰された時の写真を見つめて、僕はまた頭を抱えた。  逃げ出したい、いっそのことどこか遠くへ。……いや。それももう、手遅れだ。職場で全裸になって、オナニーでイくなんて。快楽に流されて「見て」とまで言ってしまった。会社にバレたら、どころの騒ぎじゃない。どこに出されても、一生の汚点になってしまう。  焦りすぎだ。失敗ばかりだ。どうしたら…どうすれば……。 「おい、大丈夫か?」  デスクの後ろから、聞き慣れた上司の声が聞こえた。頭を抱えてるところを見られた。 「どこか悪いのか?それとも何か、悩みでもあるのか?」  違う。こいつは心配してるんじゃない。そういう顔をしてるだけだ。もし彼のチームにいる社員が心身に不調を抱えてるなら、いつでも査定に書き込まなきゃいけない。だから注意深く観察しているだけなんだ。 「…大丈夫ですよ。ちょっとその、家の鍵をしめたかどうか思い出せなくて…ハハ」  作り笑いでなんとか取り繕った。上司は眉を上げて「そうか」と去っていく。  今日は入社以来、最悪の一日だった。  暗い気分は回復しないまま、僕は夕飯を買うのも忘れて、帰路についた。  帰宅後は何も手につかず、シャワーだけ浴びてソファでぼーっとしていた。どれくらいそうしてたかわからない。ふいに、携帯が鳴った。 『パイパン画像 20分以内』  ああ、そうだよな。もちろん、鳴ったのは自分の携帯なんかじゃない。<ご主人様>の、ありがたいご命令だ。  ろくに頭も働かないので、僕はただ亡霊みたいにふらふらと、バスルームへ移動した。空っぽのバスタブに座って、シェービングクリームを股間に塗る。 「っ…♡……一応、撮っておくか」  言いなりになりたかったわけじゃない。機嫌を取るつもりで思いついたわけでもない。  ただ、なんとなくそうすべきだと思って、僕はクリームまみれになった股を撮影した。引きつった笑顔付きだ。  あとはただ無心で剃った。つるつるになってく股間の肌触りが気持ちよかった。  日常的にセックスするなら、処理してないほうが不自然だ。僕だって誰かに見せる機会こそなかったが、性器の周りを清潔に保つために、ある程度サイドを処理してた。だからものの数分で、僕の股間は無毛になった。 「…ぇ……なんでっ♡」  細かい剃り残しを確認するため、局部のあたりをいじってる時に、気付いた。  …濡れてる。水やクリームじゃない、粘ついた透明な液体が糸を引いて、指に絡みついてた。信じられない気持ちで何度かそこを撫でてみたが、触れば触るほど、どんどん愛液が溢れてくる。 「うそ…♡うそだ、こんなの……っ♡」  なにかの間違いだ。そう自分に言い聞かせる。濡れてる理由も、感じているのかすら、わからなかったんだ。  剃り残しを全部確認し終わっても、カメラを向けた自分の股間はてらてら光ってた。  仕方がないのでそのまま、バスタブの縁に足をかける。さらに手で広げてよく見えるようにしてから、何枚か写真を撮った。なんで、どうしてと思いながら。 「ああ、うそ…なんて顔してるんだ♡僕……っ♡」  一枚目の写真を確認して、僕は絶望した。  笑顔をオーダーされたわけじゃないから、真顔で撮ったつもりだった。少なくとも自撮り画面では、そう見えてた。なのに。なのに僕の表情は、見るからに感じてた。ほのかに頬が赤く、眉間を吊り上げて、うるんだ目を細めて、口は半開き。どっから見ても、男を誘うメスの表情だ。  そこでやっと、自分の息が荒くなってることに気付く。乳首がツンと固くなって、ちょっと股をすり合わせるだけで音が出る。  股間をもじもじさせながら、僕は撮影した画像を一枚一枚確認していった。でもどれも同じような顔をしてて、ちょっと口の端が上がってるかどうかの違いしかなかった。 「いや、……れ、冷静になれっ…♡」  そうだ、こんな話を聞いたことがある。剃ると感度が上がって、感じやすくなるっていう話だ。これは多分、その弊害だ。別に剃ったから興奮したわけじゃない。いつも感じない刺激を受けて、勝手に性器が反応しただけだ。だからこれは、生理現象の一部なんだ。  自分を納得させて、なんとか平常心を保った。すり合わせてる股間はお尻の穴までヌルヌルになってたが、僕はそれを生理現象だと割り切った。そして剃る前と剃った後、二枚の写真を選んで、例のチャットアプリに送信する。  大きくため息をついて、天井を見上げた。ずるずると背中がバスタブを滑って落ちていく。僕はまだ無意識で、膝と股をすり合わせていた。 「…っ………ん…ぅ♡」  いくら待っても治まらない疼き。ぬるついて、クチュクチュと音を立ててるマンコ。オナニーをしたいと、強く思ってしまっていた。 「……がまん、できない…っ♡」  チャットの返信を待てず、僕はそろそろと指をマンコに入れた。 「あぁはっ♡ぉ……~~~っはぁ♡」  指の感触がダイレクトに伝わってくる。手が当たってる股間がすべすべしてて、穴の周りやクリトリスを簡単に刺激できる。  中で指を動かすごとに、新しい粘液が溢れてくる。 「あっ…あ゛♡…ゃ……あぁっ♡」  バスルームに反響してる僕の声は、甲高くてまるで女みたいだった。  すぐにでもイけそうで、もっと激しく中をかき回す。空いた左手で乳首をつまむと、ビクンと腰がはねた。 「んん、くっ……ぉ゛♡おぉ゛♡…~~~ぉ♡おん゛っ♡」  中指を奥まで入れて、手のひら全体でクリを押しつぶす。中指の先っぽがちょうどイイところに当たるので、そこを無心でこね回した。 「ぁあん…っあ、ぉ♡……アッ、ぁだめ…ッ♡」  腰を持ち上げて激しく右手を揺する。手のひらと股間の間で、ブチュブチュと音が立つくらい。 「イくっ…イく、イくぅ……うンっ♡」  頭がぼんやりしてきて、気持ちいいことしか考えられなくなる。ぎゅ、ぎゅ、と、呼吸に合わせてマンコが指を締めてる。それを強引にこじ開けるように、中の気持ちいい所を何度も押す。 「…ぁイっ……ん、おっ♡ぉ゛~~~♡…い、イくぅぅう゛……ッ!♡♡」  ぎゅう…とイくタイミングに合わせて、股間に手のひらを押し付けた。ピュピッ、と、マンコから変な音が出る。  次の瞬間、内股がガクガク震えて、小刻みにマンコが痙攣した。 「ぉおお゛…ぉ……んひっ♡」  絶頂の余韻を味わいながら、腰を突き上げる。腰は勝手にくねくね動いて、揺するだけで下腹部がびりびりした。 「お゛♡ぉ……あ、あぁぁ♡……いいっ♡すごっ♡ぉ…~~~ッ♡」  濡れてとろとろのマンコは、まだ指に吸い付いてる。絡みつくヒダを擦るように指を出し入れすると、溶けそうなくらい気持ちよかった。  久々のスゴい深イキだった。だらしない声をバスルーム中に響かせて、僕はバスタブの中で女みたいに悶えてた。指を抜くだけで、ビクビクッ…と下半身全部がはねる。下腹に力が入らず、下半身は何度も勝手にガクガク動く。  口からよだれを垂らしてその余韻を楽しんでると、携帯が鳴り出した。 「……ぁ…」  とろけたまんまの頭で、ぼんやり通知を確認する。 『無許可オナニー 減点50』  どうして。  頭に冷水をぶっかけられたみたいな衝撃を受けて、背中にさっと寒気が走った。なんでバレてる。動揺してると、またチャットが来た。 『画像でバレバレ 淫乱』  さらに続けて送られてくる。 『次勝手にオナニーしたら破滅』 「……ぃや…っいやだぁ…♡」 『剃り残しも破滅 1ミリ以上伸びてる所があっても破滅』 「やだ…やめて……やめてくれ…っ♡」 『命令に従うのは当たり前 <ご主人様>の機嫌を取るのも当たり前』  全部見透かされてた。  縮こまって顔を覆った。全部、全部無意味だった…。いつの間にか、僕は鼻をすすってしゃくりあげてた。  これは取引なんかじゃない。単なる脅迫だ。私刑だ。僕にはもう、自由なんかない。命令に従う以外で、やれることなんかない。顔も知らない名無しのクソ野郎に、日常を支配されてしまったんだ。  涙でぼやけた画面を見つめて、僕は一生懸命文字を打った。 『僕が何かしたなら謝ります。本当に心から謝るから、どうか許してください。このままじゃおかしくなってしまいます。僕は今の仕事が好きなんです。この仕事を続けたいんです』  送信した後で、減点のことを思い出した。残りが40点だ。もしこれであいつが機嫌を損ねたら、僕はおしまいだ。  明確な計算ルールなんてきっとない。気分次第で増やしたり減らしたりしてるんだろう。なら今は、相手に良心があることを祈るしかない。  膝を抱えて返事を待つ。1分もしない内に、携帯は新たな通知音を鳴らした。 『楽になりたいなら何も考えず従うこと』 「むりだ……そんなの、無理だよ…っ」 『画像は合格 加点20』 「ハッ…ばからしい。どうせ…どうせ満点にさせる気なんてないんだろ?ご主人気取りも大概にしろ」  恨み言を呟いてたら、また涙が出てきた。頭をかきむしりながら立ち上がる。  言葉とは裏腹に、加点されたことに内心喜んでしまってる自分もいた。認めたくない。そんなの認めたくない。 「…くそ、クソ…クソッ!」  やつは僕が逆らえないのを分かってて、怯えさせたり、喜ばせたりして、弄んでる。  いやらしい画像や動画を撮らされて、警察にも弁護士にも、どんどん話せない内容になっていってる。どんどんあいつに、追い詰められてく。  あいつは僕をどうしたいんだ。どうしてほしいんだ。金も要求してこず、ただ僕の弱味だけを握り続けて…。  異常性欲者?性的サディスト?意味がわからない。なぜ僕でなければいけないんだ。僕を傷つけたり苦しめたいだけなら、もっと他に良いやり方があるだろうに。考えがまとまらない。  真っ暗な部屋を歩き、まっすぐ寝室に向かった。食事をする気力なんてもうなかった。 「お前は僕をどうしたいんだ……<ご主人様>」  ベッドに体を投げ出す。泣き疲れた目を静かに閉じて、早くこの悪夢がさめることを願った。  また暗い朝が来た。  自分の携帯よりも先に、反射的に<ご主人様>のスマートフォンを手に取った。得点のアプリをじっと眺める。 <破滅までのカウントダウン> <残り60点> <ご主人様の機嫌を損ねると減点されます。逆に、ご機嫌を取れたら加点されることも。100点になったらご主人様が会いに来てくれますよ!がんばって!> 「残り60点…」  昨日より30点減った。あと40点稼がないと、やつの正体を知ることはできない。一気にゴールが遠ざかった気がした。そしてあと60点で、僕は破滅する。 「ご機嫌を取るのは当たり前……。ご機嫌を取れたら加点…」  昨日のチャット内容と、下部の文章を照らし合わせる。送られてくるチャットはいつも機械的だ。事務的というか。逆にアプリの説明文は、妙に他人行儀で丁寧だ。同一人物じゃない…?犯人は複数?組織的犯行?こんなくだらない脅しのために、一体誰がこんなことを。  そこで、僕は顔を上げた。スマホの箱だ。差出人…とまではいかなくとも、何か手かがりになるようなものがあるかもしれない。  飛び起きて、しまっていた箱を引っ張り出す。 「……ないか」  箱は普通のダンボールで、配送業者の伝票やシールなどはついてなかった。そうだ。そんなこと、最初に確認したじゃないか。これは直接ポストに投函されたものだ。  ということは自宅も割れてるし、多分だが僕の勤務時間も把握してる。一般的な会社員と同じ勤務時間だから、一概に言えないが…監視カメラの映像からしても、社内の人間が犯行に関わってる可能性は高いだろう。  しばらく心当たりのある人物を頭に思い描いてると、ベッドに放り出していた携帯が鳴った。 『休日と長期休暇のスケジュール 3分以内』  3分以内の文字を見た瞬間、僕は慌てて返事を打ち込んだ。わかってる限りの情報を送信した後で、呆然とする。  従うのが癖になってる。まるで訓練中の犬だ。  でもこうするしかない。諦めたらいけないのはそうだが、破滅だけは一番だめだ。  落ち着いて考えろ。<ご主人様>は、僕の休日を知らなかった。なら、少なくとも同じ部署の人間じゃない。それがわかっただけでも救いだ。  だが、やつは何をするつもりでこんなことを聞いたんだろう。 『今日の21時以降は自宅待機 時間厳守』  日にちを確認して、今日が金曜であることで合点がいった。休前日だから、派手にやるつもりなんだろう。 『納期間近の案件を抱えてます。来週頭までに仕上げないといけないから、残業させてください』  あえてリスクを取り、僕はこう返事をした。  ブラフを仕込んでみたのだ。今は大きなプロジェクトもなく、仕事は落ち着いてる。早ければ19時前には帰れるレベルだ。社内の人間なら、嘘とわかるか、それでなくとも無理やり仕上げろと言うだろう。  だが、返ってきた言葉はこれだけだった。 『口答え 減点40』  この返事じゃ何も特定できない。社内の人間だろうと社外の人間だろうと、言えることだ。ベッドに携帯を投げつけ、腕を組んで忌々しいそれを睨みつけた。 「…破滅まで、残り20点」  ぎりぎりと奥歯を噛み締めた。質問を一回でマイナス20、口答えしたらマイナス40だと。これじゃもう、何も情報を聞き出せない。恨み言の一つすら言えない。それが狙いなんだろうが、心底忌々しかった。  ランチタイム後、デスクに座ったらどっと汗が吹き出てきた。外を歩き回ったせいだ。目的は、比較的広い公衆トイレを探すため。  昼休みに、また動画撮影を要求された。今度は、広い公衆トイレでのオナニー動画だ。密室だったのは不幸中の幸いだが、最悪な要求であることに変わりはなかった。  なんて命令だ。不潔な便座に腰掛け、股を広げてオナニーさせられたんだ。  しかも、もう後が無いから、なんとしても減点を避けなきゃいけなかった。顔と局部が映ってるのは最低限だろう。だから引きのアングルで撮影できる、広いトイレが必要だった。  あとは平凡でも、つまらなくてもだめだ。だから僕は、トイレで服を全部脱いで、両手でまんこを広げて撮影した。両サイドの人差し指で、クリを激しく弾いて絶頂した。  間違いなく人生最大の汚点であり、屈辱的な瞬間だった。  そして、これからしばらくその瞬間は、更新され続けることになるんだろう。 つづく♡

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