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第14話 ほしいもの
「ふぁ、」
「奥まで随分柔らかくなったな」
「あぅ、」
「もう少し柔らかくなったら、この先にも入れてやるよ」
「ぅあ、あ!」
お腹の奥にゴチュンと大きいちんこがぶつかった。それが気持ちよくて足が勝手にブルブルし始める。頑張ってお尻を上げているけど、腕がヘニョヘニョになっているからベッドにほっぺたが擦れっぱなしだ。
すべすべのシーツが涎でぐっしょり濡れている。たぶん股間のあたりもぐっしょりのはずだ。だって、気持ちよくなると俺のちんこはすぐにピュピュッて出してしまうんだ。
「気持ちいいな?」
「うん、んっ、きもちぃ、きもひ、いぃ、」
「気持ちいいってちゃんと言えて、蒼 は偉いな」
「ぁうっ! しょこ、きもち、ぃ、」
「おー、えらいえらい」
頭を撫でてくれるのが嬉しくて、お腹の奥がグニュグニュ動いた。そうなるともっと気持ちがよくなるから「気持ちいい」しか言えなくなる。
気持ちいいときは、ちゃんと言葉で伝えるようにしている。そうすると藤也 さんが褒めてくれるからだ。褒めてもらうともっと気持ちがよくなって、俺は気持ちよくなりっぱなしだった。
「そろそろ、メスイキもできそうだ、なっ」
「ひぅっ! う、ぁ、ぁ、」
「もう結腸の手前まで入ってるぞ? ……はは、やっぱり膨らむな」
大きな手が俺のお腹を優しく撫でている。そこがちょっとだけポッコリしているのは、藤也 さんの大きいちんこが入っているからだ。
藤也 さんはポッコリしたお腹を撫でるのが好きだ。中にちゃんと藤也 さんのちんこが入っているのがわかるのもいい。
(早く、全部入るように、なるといいな)
あんなに大きな藤也 さんのちんこが、もう半分以上入るようになった。それもすごいことだけど、どんどん気持ちよくなっていくのもすごい。
擦られてビリビリするところは、もっとビリビリするようになった。最初の頃は入らなかった奥のほうをゴチュゴチュされるもの気持ちがいい。それに、最近ではお尻の穴がグワッて広がるのも気持ちがいいって感じるようになった。
(だから、すぐに入れてくれてもいいのに)
一気に穴が広がるとき、ゾクゾクしてたまらなくなる。それなのに藤也 さんは、俺が痛くないようにってゆっくりしか入れてくれない。
「お……っと、どうした、急にケツが締まったぞ?」
穴が広がるときの気持ちよさを思い出したからか、穴がキュウッてなってしまった。いまみたいに、藤也 さんのちんこをキュウッてするのも気持ちがいい。
(あ……)
背中に藤也 さんの体がくっついた。お尻だけ上げているから、お尻と腰がもっとくっつく。
「ぁ、ぁ、あ、あ、」
そのまま大きなちんこが、ゆっくり抜けたり入ったりし始めた。こうやってぴったりくっついたまま中を擦ってもらうのも気持ちがいい。ビリビリするところをたくさん擦ってもらえるし、奥もゴチュッてしてもらえるから最高だ。
気持ちよくてうっとりしていたら、急に俺のちんこを握られてびっくりした。
「ザーメンはあんまり出てねぇな。ま、毎回これでもかって出してりゃあ、金玉も空っぽになるか」
「あぅ、」
「ペニス触らなくても十分イケようになったなぁ。本当におまえは覚えがよくて、敏感で、淫乱で、最高だよ」
「ひゃぅっ。しょこ、きもち、ぃ――! あぅっ! ひ、きもち、ぃっ! きもひ、ぃ、いぃ、ぃ……!」
「ほら、イくときは、どうすんだ?」
藤也 さんの声だけで体がビクビクした。お尻がキュウキュウして、中がギュギュッて動き出す。それも気持ちよくて、俺は涎を垂らしながら「はぅ!」って声を出してしまった。
「きもちいい、いぃから、イっちゃ、う! イく、イっちゃ! 俺、おれ、イっちゃぅ! ケツマンコで、おまんこで、イっ、ちゃ――……!」
ギュッと瞑った目の奥がチカチカした。頭がブワッとして、お尻の穴も中もギュウギュウになる。あんなに力が入らなかった足までベッドをぎゅうって押しているし、両手も枕を必死に掴んでいた。
(ひ、ひぃ……っ!)
ガチガチになった体の中を、ものすごいものがギューンって突き抜けていった。それが頭のてっぺんから出て行ったあとも俺の体はずっと震えっぱなしだった。
そんな俺の体を、藤也 さんはぎゅうって抱きしめてくれる。それから耳やほっぺたにチュッチュッてキスもしてくれる。
「上手にメスイキできたな、蒼 。いい子だ」
耳をペロッて舐めながら藤也 さんが褒めてくれた。それが嬉しくて、気持ちいいのとは別に体が震えた。
「もう、手放せねぇな」
何か言われたような気がするけど、頭を撫でてくれる手が気持ちよくて聞き逃してしまった。キスもちんこも気持ちいいけど、こうして撫でてもらうのも気持ちよくて好きだ。暖かくてホッとできて、寝る前のように気持ちよくなってくる。
(……お母さんに撫でてもらったのと、ちょっと似てる)
そんな変なことを思いながら、藤也 さんに抱きしめられて眠った。
食器を洗って洗濯機をポチッとしたあと、藤也 さんのお布団と俺のお布団を乾燥機でフカフカにした。前よりもずっと早くできるようになった気がする。
「でも、もっとテレビと本を見ないと」
もっともっと藤也 さんの役に立てるようになりたい。
「それに、できることをもっと増やさないとダメだ」
俺はまだ料理ができない。藤也 さんに禁止されているのもあるけど、このままじゃ食べるばかりで迷惑をかけっぱなしになってしまう。そんなことを考えていたら、洗濯機が鳴っていることに気がついた。
「よし、まずは綺麗にたたもう」
藤也 さんのものを丁寧に綺麗にたたむ。本当は仕事で着るシャツも洗いたいんだけど、アイロンを使うのはまだ早いって言われて洗濯できない。だから、仕事で着るシャツは藤也 さんがクリーニングに持って行っている。
「アイロンも使えるようにならないとなぁ」
まずはいろんな服を綺麗にたためるようになろう。そうやって一枚ずつ丁寧にたたんだ藤也 さんの服をしまったら、次は俺の服だ。下着とシャツを抱えてクローゼットを開けると、長袖の服と上着がまた増えていた。
「もうすぐ満杯だ」
俺の服は藤也 さんが買ってきてくれる。しかも何枚もだ。そのことに気づいたときには、もうたくさんの服が並んでいた。
「こんなにたくさん必要ないのに」
ここに来る前は長袖三枚と半袖が五枚、それにズボンが二枚だけだった。それで十分だったのに、部屋から出ないいまのほうがたくさんになってしまった。
「それに、こういうのもくれるし」
俺の右手には、薄いピンク色のアクセサリーが巻いてある。桜色って教えてもらったけど、桜の花をちゃんと見たことがないからこういう色かはわからない。
これも藤也 さんがくれたものだ。「絶対になくすな、いつもつけてろ」って言われたから、お風呂のときも寝るときも外さないようにしている。
「アクセサリーとか、俺にはもったいないだけなのに」
アクセサリーをつけても俺が綺麗になることはない。それでも藤也 さんにもらったものだから、言われたとおりずっとつけていた。
「あ、そろそろ料理番組が始まる時間だ」
たたんだ服をベッドの上に置いて、急いでテレビの前に座った。この時間の料理番組は電子レンジで作れる簡単なものを教えてくれる。フライパンは駄目かもしれないけど、電子レンジならポチッとするだけだから俺にもできそうだ。
藤也 さんも電子レンジは使っていいって言っているし、何か作れそうなものがないか毎日見ている。「今日は何かな」なんて思いながらテレビをつけた。
「……え?」
大きなテレビ画面に映っていたのは藤也 さんだった。
「え? なんで?」
朝と同じ綺麗なグレーのスーツに濃いグレーのシャツを着ている。それに、赤色っぽいけど赤じゃない、なんとかって色のネクタイも同じだ。
仕事のときは、ちょっとだけ長い前髪を整髪料で横にするからおでこが見える。それも朝と同じだった。ってことは、テレビに映っているのは藤也 さんで間違いない。
「……やっぱりかっこいい」
今朝見た藤也 さんもかっこよかったけど、テレビの藤也 さんもかっこよかった。それに、テレビだと違う人みたいに見えてドキドキする。
「でも、難しい話ばっかりで全然わからないや」
せっかく藤也 さんが映っているから一生懸命見ているけど、何を言っているのか全然わからない。アイティーとかサキモノトリヒキとか、それにベンチャー? 俺が聞いても全然わからない言葉ばかりだ。そういえば、藤也 さんの部屋の本棚にも難しい言葉の本ばかり並んでいる。
――ボルドーのネクタイがすてきですね。
藤也 さんの隣に座っているお姉さんの言葉で、ネクタイの色の名前を思い出した。
――発売されたばかりのこちらの雑誌ですが、さっそく注目されているそうですよ。
そう言ったお姉さんが雑誌を持っている。
「藤也 さんが載ってる、雑誌」
テレビに大きく映ったページには、かっこいい藤也 さんの写真が載っていた。
――今日発売とのことですが、きっとすぐに売り切れますね。
そう言ってニコニコ笑っているお姉さんに、藤也 さんが「経済雑誌ですよ」って笑い返した。
「……いいなぁ」
思わず声に出てしまった。かっこいい藤也 さんが載っている雑誌なら俺だってほしい。毎日藤也 さんを見ているけど、それと写真は別だ。写真があれば、いつでも藤也 さんを見ることができる。
それに、もしお母さんみたいにいなくなったとしても写真があれば安心だ。部屋から追い出されても、写真があればずっと藤也 さんを見ることができる。
「藤也 さんに会えなくなるのは、嫌だけど」
でも俺は頭がよくないし藤也 さんの役にも立っていない。練習は毎日しているけど、いつ練習が終わるのかも教えてもらっていなかった。練習が終わって、ちゃんと藤也 さん専用になれるのかもわからない。
「もし練習が終わって、やっぱり俺なんていらないって言われたら……」
たぶん、風俗店に連れて行かれることになる。そこで死ぬまで働いて、迷惑料とかを払うことになるんだろう。
「……雑誌、買わないと」
そうなっても写真があれば藤也 さんの顔をいつでも見られる。だから、お母さんの写真と一緒に持ち歩けるようにしておきたい。
「売り切れるって言ってた」
売り切れる前に買いに行かないと。
お姉さんはコンビニでも売っているって話していた。コンビニなら行ったことがあるからわかる。あちこちにあるから、このビルの近くにもあるはず。
「でも、お金が……そうだ」
最後に荷物を運ぶ仕事をしたときのお金を、クタクタのカバンに入れたままだった。
急いでクローゼットの中に入れていたカバンを引っ張り出した。ファスナーがついているポケットに手を突っ込んで……あった。封筒の中を見ると、五千円が入ったままだった。
「これで買えるかな」
経済雑誌がいくらするのかわからない。なんだか高そうだけど五千円で買えるだろうか。
「とにかく、コンビニに行こう」
俺はニットのカーディガンを着て、ズボンのポケットに五千円を突っ込んで部屋を飛び出した。
玄関には俺が履いていた靴はなかった。きっと少し破けていたから藤也 さんが捨てたんだ。代わりに真っ白のスニーカーが置いてあった。藤也 さんの靴よりずっと小さいから、たぶん俺の靴だと思う。
「藤也 さんが、買ってきてくれたんだ」
初めて履いたその靴は、足にぴったりだった。
「コンビニ、探さないと」
俺はドアを開けてエレベーターに乗り、急いでビルの出入り口に向かった。
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