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第2話
春風の舞う校舎裏。初恋の散り様を見届けた遥斗は、独り佇んでいた。
「相変わらずの女泣かせね。」
「人聞きの悪いこと言うんじゃない。」
背後から聞こえてきた声にそう返す。相手は解っていた。二宮 悠理 。遥斗達と同じクラスであり、信頼できる友人である。
「だって、実際そうじゃない。」
「そうかもしれんが…いや、そんなことはどうだっていい。なんでここに来た?」
「あぁ、それね。あんたが振った子、うちの部活の後輩でちょっと前から相談されてたから様子を見に来ただけよ。もっとも、ちょっと遅かったけど。」
「お前らしいな。」
「あの子、ずいぶん勇気振り絞ったみたいだけど、あんたはお構いなしね。」
「仕方無いだろ。俺はそう言うのに興味がないんだから。」
「そう言うのに興味がないねぇ…私から言わせてみれば、それ本気で言ってる?って感じだけど。」
「どう言うことだよ?」
「あんたもあいつも自覚ないわね。」
「は?なんのことなんだよ?」
「日野 拓海。」
その名前を聞いたとたん、心臓が跳ねた。
「ほら、顔真っ赤になった。」
「は、はぁ!?じゃあなんだよ、俺はあいつのことが好きだってのか!?」
「そうでしょ。」
あまりにも淡々と、押さえられてきた遥斗の心の蓋を抉じ開けていく。
「別に今のご時世そんな変なことでもないでしょ。好きなら告っちゃえばいいのに。」
「いや、だってそんなの………。」
「あんたより年下に出来てたんだよ?あんたに出来ないわけがない。チャンスならいくらでもあるでしょう?いつも一緒にいるんだから。」
「そうじゃなく………そんなこと急に言われても………それにあいつはあいつで好きな奴がいるらしいし。」
「十中八九あんたのことよ。」
「!?」
「だから言ってるじゃない。回りから見たらそんなの一発なんだって。」
あっさりと、今までの気持ちに対する回答を告げる悠理になにも言葉がでなくなる。
「俺は、どうしたらいい?」
「そうね、あんたの判断次第よ。このまま友達で居続けるか、それとも恋人として歩き出すか。」
その2択に、明確な答えはでなかった。ただ、側にいれたらそれでよかった。それだけなら友達でもいい。だが、仮にもし拓海に恋人が出来たら。それを考えたとたん、嫌だという一言に襲われる。
「恋人になりたいなら、協力するわよ。」
「………なんで、そこまでしてくれるんだ?」
「あんた達みてるとじれったいのよ。とっとと付き合っちゃえって思っちゃう。」
「そうか………俺は拓海の側にいたいだけだ。だけど、あいつに他に好きな奴が出来るのは…嫌だ。」
うつむき、そう話す。
「なら答えは決まったのね。」
「あぁ、二宮。協力してくれ。」
真っ直ぐに遥斗は顔を上げた。
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