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第1話 きっかけは骨折

あと3日で夏休みが始まる。 汗を吸いまくった制服のシャツのボタンをがっつり外して、俺はコンビニへと向かっていた。 「よ、キサキ!一緒に駅まで行こうぜ」 追いついた同じクラスのシロタが声をかけてきた。 「おお、シロタじゃん。あちーよ、なんなん?この暑さ。駅着く前に死ぬからコンビニ寄ろうぜ」 「アイスかおーぜ。暑すぎて死ぬよ、でもあと3日でこの道通らなくていいと思うと、すげーうれしー」 「でも補講があるやん。お前受けないの?」 「あ、おれ予備校いくんで受けんのよ」 高校2年、希望の大学を決めてる奴はもう準備始める頃なんだ、と驚いた。 「そっかー、じゃあ涼しいところで勉強できるんだ」 「へへっ、キサキは補講だけ?」 「んー、その予定」 コンビニまでの道には陽炎が立っていて、ホントになんでこんなとこに人間が住んでるんだろうって思う。 曲がり角に差し掛かったあたりで後ろから自転車が来る音がする。後ろを振り返ってみると、隣のクラスのヨコジマが「よっ」って感じで片手を上げて笑顔で追い抜いて行った。 追い抜かれた…ハズだった 「あっ!」という短い声とともに聞こえてきたのは、耳障りなブレーキの音だった。 キキキキキキキーーーー!!! 急ブレーキをかけた目の前のヨコジマの自転車の後輪が一瞬浮いて前のめりになった後、元に戻って、横に倒れ始めた。 「うおぁっ!!」 って変な声を出してヨコジマが倒れる自転車の上でバランスを取ろうとしていた。 「あぶね!」 考えるより先に飛び出してアスファルトに向かって落ちてくる背の高い身体の下に手を伸ばした。 スローモーションみたい。 ゆっくり右に傾く身体、頭を打つとやばいから肩を支えなきゃ、って右腕を下に入れる。腕にかかってきた体重を支えなきゃ… ホントに集中すると、人間ってこんなに早く動けるんだ… って、ドサッ。 「!!!!!いてぇーーー!!!」 これは俺の悲鳴。 「キサキ!大丈夫か?」 俺に声を掛けたのはシロタ。 ヨコジマは何が起こったか分からずに目を丸くしてたらしい(シロタ談)。 倒れる男(推定70kg)を支えようとした俺(確か55kg位)は、筋肉の足りなさからそのままヨコジマと一緒に転倒し、右腕を骨折したのでした。

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