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第2話 ヨコジマが照れた話
「悪かったよ、ごめん」
「え、なんでお前があやまんの?」
「いや…俺のせいで骨折とかさせちゃって、せっかく夏休みだってのに」
接骨院でギプスをしてもらい、会計を済ますまでの時間、俺たちはだらだらとしゃべり続けていた。
看護師さんに「男子高校生、おしゃべりねぇ」って言われてしまった。
後で聞いたらヨコジマの自転車の前に猫が飛び出てきたらしい。
自転車にびっくりして固まっていた猫を轢かないように急ブレーキをかけたんだとさ。
「猫、無事だったんだろ?轢かなくてよかったよ。お前、少女漫画に出てきそうだよな」
ふと思いついて、裏声で言ってみた。
「ヨコジマ君ってやさしい…好きになっちゃった。付き合って下さい」
首をかしげて肩をすくめ、折れてない方の手をヨコジマの方に差し出して、可愛くスマイルする俺。
真剣に謝ってるヨコジマを和ませようとしたつもりが効きすぎたようで、耳まで赤くなった。
「うっわ、そんな事されると、俺が男だったら惚れる」
何を言ってる?大丈夫か、ヨコジマ。
「お前男だろ?」
「そっか、じゃあお前が女だったら惚れてる」
ふたりでゲラゲラ笑うと、看護師さんに睨まれた。
「助けてくれたお礼にさ、夏休み中キサキが困った事があれば面倒見るよ。課題とか、大変だろ?」
「お、おう。ありがと」
ヨコジマとはクラスが違うけど同じ理系物理選択だから、物理と体育の時だけ一緒になる。背が高くて筋肉も付いていていいよな。凄いアピールしてる女の子がいることも知ってる。
確かにこいつ、格好いい。
初めて個人的に話したけど、なんか無茶苦茶いいやつだー!
さっきのヨコジマのセリフじゃないけど、俺が女なら、惚れてるよ!
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