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第一章 2
先にシャワーを使わせて貰い寝る支度を整えると、オレは遙人のベッドに潜り込んだ。
ふた部屋あるうちのひと部屋いっぱいのダブルベッド。ひとり暮らしのくせに最初からこのサイズを設置していた。
ふたりの関係がまだはっきりしないうちから、遙人はオレとのことを考えていたのだろうか。そう思うと胸が熱くなる。
オレがはっきりと言葉にして遙人への想いを伝える前までは、ただこのベッドで肌を寄せあって眠っていた。オレを後ろから抱きしめるような形で眠るのが、彼は好きだった。
そして、想いを通わせた後は、このベッドでも……。
いろいろ思い出して顔が熱くなり、オレは頭まで布団を被った。
「詩雨さん? 寝ちゃったんですか?」
シャワーを使い戻ってきた遙人がすぐ傍で声をかけてくる。オレは返事をせずに、寝た振りをした。
しばらくして、遙人が静かにオレの横に潜り込む気配がした。いつものようにオレの背中にくっついて、後ろから抱きしめて、寝──はしなかった。
匂いを嗅ぐように鼻先をオレの髪に埋 め、それから、項に唇をよせる。ちゅっちゅっと軽くキスをしたかと思うと、ちゅうっと強く吸いあげた。
「ん……」
つい声が漏れてしまう。
「やっぱり起きてた。なんで寝た振りなんか」
笑い混じりの声がした。
「寝てたよっ。おまえがそんなことするから」
バレバレなのにそんな嘘が飛び出す。
「そう?」
くすくす笑いながら、それでも項への口づけをやめない。前にまわした手で腹や胸を撫ぜ身体はぐっと密着してくる。
オレの背に欲望の証。
「おまえっ」
慌てて離れようとするが、遙人がそれを許さない。
「最後の夜だから……いいでしょ?」
甘く淫靡な声が耳を擽る。
「う……」
危うく流されそうになり、はっと我に返る。オレはくるっと体勢を変えた。遙人と向き合うような形を取り、それから今までオレの項を攻めていた唇を両手でぎゅっと押さえた。
「だめだめっ。明日早いし! それにこのベッド、明日リサイクルに出すんだからなっ!」
明日朝イチでリサイクルショップのスタッフが来る手筈になっている。勿論このベッドもリサイクルリストに入っている。
そんな直前でエッチなんてできるものか。例えスタッフにわからなくても、オレが恥ずかしいだろっ。
「もう、明日の夜でいいだろっ。明日からはずっと一緒の部屋にいられるんだから。いつだって、できる」
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