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第7話 出勤
その日、アーサーはすぐに眠ってしまい、何事もなかった。
葛城に会おうかとも考えたが、アーサーのことがもう少しわかってからでいいかと思い、やめた。
どうせ、明日出勤すれば、葛城には会える。
――――――――――――
翌日、出勤の支度が終わり、眠っているアーサーに声をかける。
「アーサー、これから俺は仕事なんだ。ごはんは、食べたければテーブルにあるから。外に出るなら、鍵をかけてね。」
アーサーから生返事が返ってくる。
大丈夫か心配だが、仕方ない。
アーサーは、見た目が子どもだっただけで、知能は大人だ。
ついつい、騙されてしまう。
会社に着いて、早速葛城と話したかったが、周りに人がいて厳しかった。
メッセージで、昼休みに会おうと連絡を入れた。
「宝城さん……!」
休憩室で待つ俺に駆け寄り、葛城は、今まで見たことのないくらい輝いた笑顔を向けてくれた。
「昨日はすみません。アーサーがそばにいたので……。」
「ええ!そうなんですか……?無事……なんですか?」
何をもって無事というのか。
「アーサーは……その、俺のことが好きで地球にきたらしいのです。力を無くした状態なら地球に降り立つこともできるらしくて。俺と暮らしたいからと言って、今、アパートにいます……。」
自分でもよく要約できたなと思う。
「そうだったんですね……。」
葛城は、こちらが予想していたよりは反応が薄かった。
「あの……もう少し驚かれるのかと思ったのですか……。あのアーサーが近くにいて、その、俺のことが好き……って、結構意外な情報かと思うんですけど……。」
「俺が驚かないのは、宝城さんが勇者として亡くなった後を知っているからです。」
葛城が真剣な顔をして話し始めた。
――――――――――――
メリア星での攻防。
侵略者アーサーと宝城の前世である勇者は、幾度となく戦った。
二人が強すぎて、簡単に援護はできない。
いつも一騎打ちだった。
アーサーの鋭い魔法がついに勇者の胸を貫く。
勇者は倒れた。
アーサーはとどめを刺そうと勇者に近づいた。
その時、こども結社の援軍が来て、勇者に弾丸を放った。
そこで、アーサーがキレたのだ。
「お前ら!よくも!」
援軍は、そのままメリア星を武力で支配するために大軍で来ていた。
その大軍を、アーサーの操る機械人形が壊滅、皆殺しにしたのだ。
援軍には、結社のナンバー2、3もいたが、アーサーに殺された。
アーサーは、泣きながら勇者の亡骸を自分の宇宙船に乗せ、そのまま飛び去り、戻って来なかった。
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