7 / 7

第7話 出勤

その日、アーサーはすぐに眠ってしまい、何事もなかった。 葛城に会おうかとも考えたが、アーサーのことがもう少しわかってからでいいかと思い、やめた。 どうせ、明日出勤すれば、葛城には会える。 ―――――――――――― 翌日、出勤の支度が終わり、眠っているアーサーに声をかける。 「アーサー、これから俺は仕事なんだ。ごはんは、食べたければテーブルにあるから。外に出るなら、鍵をかけてね。」 アーサーから生返事が返ってくる。 大丈夫か心配だが、仕方ない。 アーサーは、見た目が子どもだっただけで、知能は大人だ。 ついつい、騙されてしまう。 会社に着いて、早速葛城と話したかったが、周りに人がいて厳しかった。 メッセージで、昼休みに会おうと連絡を入れた。 「宝城さん……!」 休憩室で待つ俺に駆け寄り、葛城は、今まで見たことのないくらい輝いた笑顔を向けてくれた。 「昨日はすみません。アーサーがそばにいたので……。」 「ええ!そうなんですか……?無事……なんですか?」 何をもって無事というのか。 「アーサーは……その、俺のことが好きで地球にきたらしいのです。力を無くした状態なら地球に降り立つこともできるらしくて。俺と暮らしたいからと言って、今、アパートにいます……。」 自分でもよく要約できたなと思う。 「そうだったんですね……。」 葛城は、こちらが予想していたよりは反応が薄かった。 「あの……もう少し驚かれるのかと思ったのですか……。あのアーサーが近くにいて、その、俺のことが好き……って、結構意外な情報かと思うんですけど……。」 「俺が驚かないのは、宝城さんが勇者として亡くなった後を知っているからです。」 葛城が真剣な顔をして話し始めた。 ―――――――――――― メリア星での攻防。 侵略者アーサーと宝城の前世である勇者は、幾度となく戦った。 二人が強すぎて、簡単に援護はできない。 いつも一騎打ちだった。 アーサーの鋭い魔法がついに勇者の胸を貫く。 勇者は倒れた。 アーサーはとどめを刺そうと勇者に近づいた。 その時、こども結社の援軍が来て、勇者に弾丸を放った。 そこで、アーサーがキレたのだ。 「お前ら!よくも!」 援軍は、そのままメリア星を武力で支配するために大軍で来ていた。 その大軍を、アーサーの操る機械人形が壊滅、皆殺しにしたのだ。 援軍には、結社のナンバー2、3もいたが、アーサーに殺された。 アーサーは、泣きながら勇者の亡骸を自分の宇宙船に乗せ、そのまま飛び去り、戻って来なかった。

ともだちにシェアしよう!