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第8話
薫を追い出した団長は、追い出してすぐに我に返り大人気ない自分の行動に嫌悪していた。薫を早く追いかけなければ。体が動かなかった。どうせ、俺と居たら面倒事に巻き込んじまう。でも、戸籍を作る金ぐらいは渡してやれば良かった。
「あいつは異世界人。あいつから見たら俺が異世界人になるわけだが、ああくそ。それにあいつは貴方は馬鹿ですか。そう言っただけじゃねぇか。なのに俺は馬鹿にするのかなんて逆上して。
あいつの話。聞いてやれば良かった」
頼れる奴いねぇのに。探さねぇと。せめてあいつに常識を教えて自立出来るように。
ようやく外に飛び出したが、雪が降っている事に初めて気付いた。自分が戻って来た時は雪なんてまったく降っていなかった。コートを着て、コートをもう1枚持ち街へ走った。寒さでもし街でうずくまっていたら凍死する。死んでいたら全面的に俺のせいだ。
「カオル」
必死に名前を呼んだ。街には人っ子1人見当たらない。この雪だ。誰も外には出ないだろう。家の陰になる場所や、屋根のある店。くまなく探したが見つからない。まさか奴隷商に売られた。あの容姿だ。珍しがって連れて行かれたのかもしれねぇ。
もう1度大声で薫の名を呼んだ。
「カオル」
「はい」
返事が聞こえた。淡々としたなんの感情もこもっていない声。
「あの大丈夫ですか?」
「心配するなら、心配してる声出せよ。
こんなことを言いたかったわけじゃねぇ」
何処から現れたとか、今は全部どうでもいい。
薫をおもいっきり抱きしめた。暖かい。生きている。本当に良かった。死んでなくて。
「悪かった」
「はい。許します。聞いてもらいたい話。あるんですけど、良いでしょうか」
「聞いてやるなんでも。俺のことはジキルでいい」
「分かりました。ジキル。苦しいので離しください」
「悪りぃ、コート着ろ」
「ポンチョにコート着られますか?」
「着てみりゃ分かるだろ」
「そうですね」
ぶかぶかのコートを着て、必死に腕まくりをするカオル。カオルを見て今度は間違ったりしない。ジキルは心に誓っていた。
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