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第7話
「貴方。本当に面白いわね」
彼の飲んでいる紅茶にお酒でも入っているのかと疑うほど笑っている。薫はこんなに楽しそうに笑える彼が羨ましかった。
「良いですね。表情豊かで」
「あら。あんたはもう少し笑顔の練習した方が良いわよ。団長。まだあの寮にいたのね」
「汚いお部屋のような寮にいました」
「そう。オレ。団長に言われのよ。
お前みたいなオカマ騎士に相応しくない。
出て行けって。他の人に言われたら傷付かなかったの。団長に言われたらダメだった」
酷い言葉をかけた人。それが副団長。誰でも言われたくない言葉はある。薫だってそうだ。傷付いていないわけじゃない。顔に出ないだけ。この人には。
「おい、出来たぞ。お前の身分証。
あとで神殿で魔力検査。属性検査してもらえ。
働くところがねぇなら、この厨房で働け。
いつでも歓迎だからな」
店主が身分証をテーブルに置いてくれた。この人には借りがある。仲直りさせてあげるのが筋だと思う。薫は変な所で真面目なのだ。
「ここでわたし働きます。あなたはえっと。
わたしは薫です。今更ですけど。あなたはここで働いているのですか」
「そうよ。店主。働いてくれるそうよ。2階。
あたしと使えば良いわよね。出来れば団長に1度会いに行ってあげて。あたしと2階に住むかはその後決めたら良いわ。あの人。きっと探してるわ。カオル。あたしのことはジェリーって呼びなさい」
「ジェリーさん」
さん付けで薫が、呼んだら両頬をむにーっと引っ張られた。なんだろう。初めてやられた。
「ほんと、顔に出ないわね。さん付けやめなさい」
ちゅっ。
額に柔らかな唇が落とされた。自然だ。日本にいたらNo.1ホストになれる。恋愛詐欺師とか言われるかも。
「あり、が、ございます」
頬を引っ張られているから、とが言えない。違う違う。どうしてわたしはお礼を言っているのでしょう。分からない。何がしたいんだわたしは。
「なに、お礼なんて言ってるのよ。
早く呼びなさい」
頬から手が離れた。痛くはないけど、赤くなってるかな。
「ジェリー。よろしくお願いします」
「ええ。よろしく。カオルちゃん」
「カオルちゃんは遠慮させてください」
「あら、可愛いのに。分かったわ。カオル」
美人のウィンク。さまになるな。ジェリーはキス魔なんだろうか。それなら今後は辞めて貰おう。キスは大切な人にするものだから。
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