20 / 44
第20話
必需品を揃える前にやって来たのは、神殿。薫の身分証にスキルや種族を入れるために検査をするらしい。個人情報はあるみたいで情報は見られることはない。検査する人のみしか入れないらしく、薫が1人で神殿に入った。
「ふわぁ。どうぞー」
なんだこの人。やる気無さ過ぎる。眠そう。神官なんですよね。十字架の入った帽子被っている。
「あの、お名前は」
「知りたいの。名前」
「どちらでも大丈夫です。興味はありませんから。ごめんなさい。マナーかなと思いまして」
「おもしろ。おもしろいから教えてあげる。
名前。リーブ。よろ、しく」
「リーブさん。リーブさんですか」
「驚くような名前。普通に居るよ。たぶんね。
さん。いらない。年上だよね。たぶん」
「見えませんよね。名前だけ。
薫。29歳。リーブの種族は」
「彪だよ。見えないでしょ。ここ。
中に水晶あるから。水晶の側。身分証置いて。
光が身分証に入る。なるべく早く出てきて」
リーブがなんだか焦っているように、薫には見えた。さっきまでのんびりやる気無さそうだったのに、今はかなり焦っている。どうしたのだろう。早くした方が良さそう。
「分かりました」
入って、なんの神様かは分からないステンドグラス。十字架。十字架の下に台座があり、水晶が置かれていた。
「身分証を水晶の側に置いて。手をかざす」
眩い光が水晶から放たれた。光が身分証に入り、これで終わりのはずが、光は収まらず薫の中に入った。両手が微かに光っている。
「何これ。身分証をしまって。出よう」
部屋を出るとリーブが眠そうな顔で待っていた。
「早く。行こ」
リーブが薫の右腕を掴み走り出そうとした。何処から現れたのか、ぞろぞろ神官が出てきた。服装は神官なのに、神官に薫には見えなかった。
「リーブ。やってくれたな」
先頭にいた神官の手に棒状の何かが見えた。掴まれていた右腕を外して、リーブを庇うように前に出る。頭部に痛みを感じて意識を手放した。
ともだちにシェアしよう!